1995 Fiscal Year Annual Research Report
術中脳内サイトカイン,オピオイドリセプターの制御による術後栄養状態改善の試み
Project/Area Number |
06671321
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉田 祥吾 久留米大学, 医学部, 助手 (30191589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野明 俊裕 久留米大学, 医学部, 助手 (20248420)
石橋 生哉 久留米大学, 医学部, 助手 (90248427)
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Keywords | 手術侵襲 / サイトカイン / オピオイド / 蛋白代謝 / 糖代謝 |
Research Abstract |
平成7年度はサイトカイン(TNF-α)の脳室内投与によって惹起された蛋白代謝動態の変動が抑制されるか否かを検討した。TNF-α脳室内投与(600mg/rat)によって,筋肉の蛋白合成速度は正常ラットに比べて低下し,肝臓で分泌される蛋白(急性相蛋白)などの合成速度は増加すること,ならびに全身蛋白崩壊速度は増加することが判明した。すなわち,我々がこれまで測定してきた担癌,敗血症,術後ラットなどの蛋白代謝動態と同様な変化をきたすことが分かった。フェンタニル(50μ/kg)をTNFを投与する前に静脈内注入を行うと,筋肉の蛋白合成速度はTNF投与のみの群と差異を認めないが,血漿蛋白合成速度はTNF群に比べて有意に減少し,全身蛋白崩壊速度も有意に減少した。このことおよび,フェンタニルは手術侵襲時には侵襲ホルモンの分泌を軽減し,糖産生速度の亢進を抑制することか,フェンタニルは術中,術後の疼痛刺激による交換神経-視床下部下垂体系の遮断効果のみならず,サイトカインによる侵襲反応も制御することが示唆された。今後の検討としてサイトカインの拮抗物質の投与によってサイトカインによる侵襲反応を抑制できるとの報告は数多くみられること,さらにはその投与量についても検討されていることから,拮抗物質に関する研究については意義が少ないと考えられる。近年では脳内にはフェンタニルと同じオピオイドであるモルヒネが産生され,侵襲反応を制御しているとの報告があり,平成7年度に得られた結果を元に,平成8年度ではフェンタニルがTNFによる蛋白代謝動態の変動を制御する機構を解明する目的で,フェンタニルが脳内モルヒネ濃度に及ぼす影響についておよび視床下部,下垂体ホルモンへの影響について検討する。脳内のモルヒネ濃度はfmolのレベルで測定する必要があり,電気化学検出機(ECD)を用いると理論的には可能である。
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