1996 Fiscal Year Annual Research Report
術中脳内サイトカイン,オピオイドリセプターの制御による術後栄養状態改善の試み
Project/Area Number |
06671321
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉田 祥吾 久留米大学, 医学部, 助手 (30191589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貝原 淳 久留米大学, 医学部, 助手 (20204315)
白水 勇一郎 久留米大学, 医学部, 助手 (20258429)
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Keywords | サイトカイン / 手術侵襲 / 蛋白代謝 / 糖代謝 / ストレスホルモン |
Research Abstract |
平成8年度は脳室内にTNF-α(600ng/rat)を投与した時にみられるストレスホルモンの変動および脳内のモルヒネ濃度の変動について検討した.さらに,フェンタニルの静脈内投与によって,TNF投与による筋肉の蛋白合成速度の低下,全身蛋白崩壊速度の増加,糖産生速度の増加が抑制された機構を解明する目的で脳内のモルヒネ濃度,ストレスホルモンの変動についても検討した.脳内のモルヒネ濃度の測定は電気化学検出器(ク-ロケム社)によって測定した.内部標準としてカルバマゼピンを用いた.250g前後のSDラットの脳室内にカテーテルを挿入し,TNF-αを脳室内に投与すると,血清コルチコステロン,エピネフリン,ノルエピネフリンの濃度が投与後30分後に増加し,240分で前値に回復した.一方,脳内のモルヒネ濃度はTNF投与後30分で増加し,240分でも高値であった.同量のTNFを静脈内に投与しても脳室内投与によって観察されたストレスホルモンの変動および脳内モルヒネの濃度の変動は認められなかったことから,TNFなどのサイトカインが中枢神経系を介して侵襲反応を引き起こす経路があること,およびこの侵襲反応伝達経路には内因性の脳内モルヒネが関与していることが示唆された.TNF投与前にフェンタニル(50ug/kg)を投与するとストレスホルモンの産生は完全にブロックされ,脳内のモルヒネ濃度の産生も抑制されていた.以上のことから,フェンタニルの侵襲反応抑制機序としてフェンタニルのopioidの前投与によって内因性のopioidであるモルヒネの産生が抑制されたことが考えられた.今後,解明すべき点としては,モルヒネと侵襲反応について侵襲時の疼痛緩和作用のみならず,外科侵襲期にみられる栄養状態の低下との関連についても検討する必要がある.
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