1994 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外マトリックス;テネイシンの生理学的機能の解析及び定量化による臨床応用
Project/Area Number |
06671383
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
若林 俊彦 名古屋大学, 医学部, 助手 (50220835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 純 名古屋大学, 医学部, 講師 (40158449)
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Keywords | テネイシン / 細胞外マトリックス / 脳腫瘍 / グリオーマ / 腫瘍マーカー / モノクローナル抗体 / 髄液 / 診断 |
Research Abstract |
細胞外マトリックスを構成する糖蛋白成分のひとつであるテネイシンは一部の腫瘍細胞、特にグリオーマより分泌され神経系腫瘍の増殖浸潤能あるいは浸潤周囲組織の免疫能との関連性が示唆されている。一方、ヒトグリオーマ細胞を免疫原として作成されたモノクローナル抗体81C6は、すでに特異的画像診断や治療へと臨床応用も開始されており、そのエピトープとしてテネイシンの一部を認識していることが確認され脳腫瘍の病態解析の糸口となることが期待されている。近年、我々はテネイシンの異なるエピトープを認識する2腫類のモノクローナル抗体を用いたテネイシン高感度定量用EIAキットを開発した。この臨床応用にて、脳腫瘍の鑑別診断や治療後の経過観察が簡便になる上、組織の修復機構や転移性腫瘍の異所性組織への生着機序の解明にも役立ち、さらに神経再生機序解明の糸口にもなると考えられる。平成6年度より各種症例の髄液や血清中のテネイシン量を同定し臨床的検討を行なってきているが、現在までに脳腫瘍症例75名、非脳腫瘍症例63名の髄液や腫瘍内胞液、及び血液をサンプリングし、それぞれのテネイシン濃度を測定した。感度は10ng/ml以上であり、フィブロネクチンやラミニンなどの類似物質との交差性は認めなかった。髄液測定の結果、非脳腫瘍症例では、髄膜炎や水頭症の一部の症例では高値を示すものもあるが、大部分は100以下の低値であった。またグリオーマ系以外の脳腫瘍でも100以下の低値を示すものが多かった。一方、グリオーマ系脳腫瘍においては100以上を示すことが多くなり、特に悪性度の高いanaplastic astrocytomaやglioblastomaにおいては300以上を呈し、さらに髄腔内播種を来たした症例では1000以上と極めて高い値を示した。なお、血液中のテネイシン濃度は現在までの解析では病態との関連性は証明されていない。これらの結果より、テネイシンの髄液内濃度の測定は腫瘍診断や病態の解析に有効である可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] J Yoshida: "Tenascin in cerebrospinal fluid is a useful biomarker for the diagnosis of brain tumour" Journal of Neurology,Neurosurgery,and Psychiatry. 57. 1212-1215 (1994)
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[Publications] 吉田 純: "ヒトグリオーマ細胞に高発現するCD44とテネイシンの解析" 新村眞人, 3 (1994)