1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06671516
|
Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
村川 雅洋 京都大学, 医学研究科, 講師 (90182112)
|
Keywords | 全身麻酔薬 / 亜酸化窒素 / イソフルラン / セボフルラン / 神経伝達物質 / ドパミン / アセチルコリン / 嘔吐 |
Research Abstract |
嘔気・嘔吐は、麻酔・手術後合併症の中で、頻度の高いものである。特に全身麻酔薬の中で、最も頻繁に用いられている亜酸化窒素は麻酔後嘔気・嘔吐の頻度が高いといわれている。延髄の嘔吐中枢に刺激を送る化学受容器ひきがね帯(chemoreceptor trigger zone: CTZ)には、ドパミン、セロトニン、アセチルコリンなどの受容器がある。一方、全身麻酔薬は、中枢神経の活動即ち伝達物質の放出に影響を及ぼす。本研究の目的は、CTZに受容器の存在する各種神経伝達物質放出に及ぼす各種麻酔薬の影響を明らかにし、麻酔後嘔吐の頻度に差がある各種麻酔薬間に、神経伝達物質放出に及ぼす作用に相違があるか否かを検討することである。 ラットを用いて、ドパミンおよびセロトニンとその代謝産物である3,4ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、5ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)の脳内含量に及ぼす亜酸化窒素の作用を検討した。その結果、大脳皮質及び延髄において亜酸化窒素はドパミン、セロトニン、及び5-HIAA含量に影響を及ぼさず、DOPAC含量を増加させた。ドパミン、セロトニンなどのモノアミン神経伝達物質は代謝回転が速く、代謝産物の含量がその伝達物質放出量と相関する。したがって、亜酸化窒素が大脳皮質及び延髄においてドパミン放出を促進することを示している。 ラットを用いて、脳内マイクロダイアリシス法による大脳皮質のアセチルコリン放出に及ぼす各種麻酔薬の作用を検討した。その結果、亜酸化窒素は大脳皮質におけるアセチルコリン放出を増加させたが、イソフルラン、セボフルランは著明に減少させた。 以上の結果より、亜酸化窒素の催吐作用はドパミンおよびアセチルコリン作動性ニューロン活動の亢進によることが示唆された。
|