1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06671636
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
土岐 利彦 信州大学, 医学部, 講師 (20175475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 信吾 信州大学, 医学部, 教授 (30135579)
塩沢 丹里 信州大学, 医学部, 助手 (20235493)
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Keywords | 卵巣腫瘍 / 粘液性腫瘍 / 胃型粘液 / ステロイド受容体 |
Research Abstract |
卵巣粘液性腫瘍34例を組織学的に検討し、各種粘液およびステロイドホルモンレセプターの発現を正常頚管腺上皮と比較した。 1)組織学的には31例が良性、3例は境界悪性病変であり、これらの中で、頚管型は2例、腺上皮型は23例であり、9例は両者の混合型であった。混合型以外でも同一例に両者の組織形態を認めることが多く、両型の移行もしばしば認められたことから、頚管型と脹上皮型は共通性のある病変であることが示唆された。 2)各種の粘液染色では、卵巣粘液性腫瘍においては中性粘液およびシアル酸を含む粘液の発現が主体であったが、頚管粘液は酸性粘液および硫酸基を有する粘液が主体であった。さらに、胃表層粘膜上皮と胃底腺上皮を選択的に分染するGOCTS-PCS染色を行ったところ、検討した卵巣粘液性腫瘍全例で、胃表層型および胃底腺型粘液の発現が観察された。頚管腺ではこれら胃型粘液の発現は見られなかった。興味深いことに、卵巣粘液性腫瘍の粘液産生上皮が陥凹している部分では、陥凹部の底部に胃底腺型の粘液が、陥凹部上部には胃表層型の粘液が観察され、このパターンは正常胃粘膜に類似していた。つまり、卵巣粘液性腫瘍は個々の細胞自体が胃の形質発現を示しているだけでなく、より高次な構造としても胃の腺構造によく似た分化を呈していることが明らかになった。 3)さらにミューラー管上皮の表現型としてエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)の発現を損益染色によって28例で検討したが、ERは3/28例(11%)、PRは13/28例(46%)に発現が認められた。正常頚管腺上皮では全例にER、PRの発現を認めた。 以上から、卵巣粘液性腫瘍は、粘液産生という点からは胃上皮への分化を示すと同時に、ミューラー管上皮としての形質発現も有することが示された。
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