子宮体癌の浸潤・転移に関する諸因子について(または子宮体癌の浸潤・転移に関する研究)

1994 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06671669
• Research Institution: Sapporo Medical University
• Principal Investigator: 工藤 隆一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70045409)
• Keywords: 浸潤能 / 子宮体癌 / E-cadherin / invasion assay / type IV collagenase / 超微形態

Research Abstract

昨年度までの研究で、子宮体癌細胞における浸潤能に関し、E-cadherin,MMP,K-ras点突然変異などの各因子との関係について検討した。子宮体癌細胞におけるin vitro浸潤能が分化度(E-cadherinの発現)の低下に相関することを明らかとし、浸潤におけるMMP-9産生の重要性を見出した(日産婦誌、46、1994)。
本年度は、浸潤に伴う細胞形態との関連に着目し、細胞外matrixと癌細胞の相互作用、細胞外matrixの癌細胞浸潤能に与える影響を形態学的に検討した。また、これらの各因子に対する抗体の浸潤形態に対する影響について検討した。in vitro invasion assayを用い、抗type IV collagenase抗体、抗E-cadherin抗体の添加実験を行い、抗type IV collagenase抗体により浸潤能は抑制され、抗E-cadherin抗体では浸潤能の促進がみられることを確認した。さらに、癌細胞に対する細胞外マトリックスの影響を検討するためにMatrigel内3次元培養による形態学的検討を行った。中等度ー高分化型腺癌由来の株細胞では、球形のコロニーを形成し、Matrigelに対して低い浸潤能を示した。高浸潤性の細胞はMatrigel内培養でも樹枝上に発育し、周囲に浸潤した。高浸潤細胞の浸潤性発育は抗type collagenase抗体によりほぼ完全に抑制された(日産婦誌、46、supple、1994)また、抗E-cadherin抗体によりE-cadherin発現細胞の細胞接着は阻害され、浸潤能の昂進が認められた(日産婦誌、47、supple,1995)。
我我はinvasion assayとgel内3次元培養を併用することにより、癌細胞の浸潤能を定量的かつ定性的に評価する方法を確立した。浸潤修飾因子の添加によりin vitroにおいて癌細胞の浸潤能を抑制する可能性が示された。さらに、高浸潤性および低浸潤性癌細胞の超微形態学的特徴を明らかにした。

Research Products

• [Publications] 森泰宏、工藤隆一他: "子宮体癌細胞の浸潤能に関する諸因子の検討" 日本産科婦人科学会雑誌. 46. 509-516 (1994)
• [Publications] 岡村直樹、工藤隆一他: "子宮体癌細胞株を用いたin vitro浸潤能における抗E-cadherin抗体の影響および超微形態学的検討" 日本産科婦人科学会雑誌(第47回日本産婦人科学会学術講演会抄録集). (臨時増刊号)47. S125- (1995)
• [Publications] 森泰宏、工藤隆一他: "子宮体癌細胞株におけるプロテナーゼ産生とin vitro浸潤能の検討" 日本産科婦人科学会雑誌(第46回日本本産婦人科学会学術講演会抄録集). (臨時増刊号)46. S26- (1994)