1994 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌の癌化・進展における熱ショック蛋白の役割に関する研究
Project/Area Number |
06671671
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
寒河江 悟 札幌医科大学, 医学部講師 (00187056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 基生 札幌医科大学, 医学部, 助手 (50244348)
佐藤 昇志 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50158937)
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Keywords | 卵巣癌 / 癌化 / 浸潤・転移 / 熱ショック蛋白 / p53蛋白 / Rb蛋白 / 腫瘍抗原 / 宿主免疫応答 |
Research Abstract |
昨年までの研究で、我々はRbやp53の変異蛋白が卵巣癌細胞株の細胞内でHeat shock protein(HSP : 熱ショック蛋白)HSPと会合することを相次いで発表し(Rb;Cancer Res.53:1702,1993,p53;Cancer Letters 73:181,1993)、ヒト細胞内でも発癌に関与していることを示した。 そこでまずこのHSPがヒト卵巣癌においてp53やRb遺伝子産物などとともにどのように発現されているかを免疫組織化学的に検討した。その結果、p53蛋白の発現は癌の進展に関与し、Rb蛋白やその燐酸化に関与する酵素cdc2の発現からは癌化の初期段階での関与が示唆された(94、癌学会報告)。さらにhsp蛋白のなかでもhsp73に対する抗体が作製され(坪井・佐藤ら)、この抗体を用いて、卵巣癌の種々の病変や良性・境界悪性の腫瘍にも範囲を広げて検討したところ、正常卵巣での発現はなく、良性腫瘍では36%、境界悪性では77%、悪性腫瘍では早期癌で68%・進行癌で65%hsc73の発現を認めた。またこの染色性はRb蛋白の発現でもほぼ同様であり、境界悪性症例でpeakを示した。一方p53蛋白の発現は癌化や癌の進行により頻度を増した。今後、同一症例での検索や両蛋白の同時発現の検出を進め、電顕的検討も進める予定である。 一方、熱ショック蛋白質(hsp)は,細胞の癌化で発現増量し、細胞表面にも発現することから、宿主免疫応答の成立に重要な蛋白質であることが判明しつつある。我々はラット胎児由来線維芽細胞WFBを活性型H-rasで形質転換させて得られた線維肉腫W31の細胞表面に発現する♯067抗原がheat shock cognate protein 73(hsc73)であることを発見した。そこで今回宿主免疫応答の有無について、ラット線維肉腫W31と同系のT細胞を用いて検討したところ、その細胞障害性はhsc73をリガンドとして認識しており、さらに腫瘍細胞表面のhsc73を認識する際には、hsc73と腫瘍細胞由来のペプチドとの複合体を認識している可能性が示唆された。またhsc73に特異的な単クローン抗体NT22を開発し、ヒト卵巣癌細胞株5種を用い、hsc73の細胞表面発現をFACSにより解析したところ、hsc73が5株中4株に強く発現していることが確認された。以上より、ヒト卵巣癌細胞でもhspが発現増量するということはhspの腫瘍抗原としての特徴を示唆し、また細胞表面にも発現するということは腫瘍免疫の標的分子となっている可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 武田智幸、寒河江悟、他: "ヒト卵巣癌の進行におけるp53,Rb蛋白とheat shock protein 70 familyの発現" 日本産科婦人科学会講演要旨集. 46(Supplement). 169- (1994)
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[Publications] 杉村政樹、寒河江悟、他: "ヒト卵巣癌における70kDa熱ショック蛋白(hsp)ファミリーの発現" 日本婦人科病理コルポスコピー学会講演要旨集. 12. 37- (1994)
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[Publications] 武田智幸、寒河江悟、他: "ヒト上皮性卵巣癌におけるRb蛋白、cdc2,hsp70 familyの免疫組織化学的検討" 日本癌学会講演要旨集. 1349- (1994)
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[Publications] 斉藤 督、寒河江悟、他: "卵巣癌における第6染色体長腕の共通欠失領域から単離された癌抑制遺伝子の候補遺伝子の解析" 日本癌学会講演要旨集. 724- (1994)
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[Publications] 高嶋 知、寒河江悟、佐藤昇志: "腫瘍抗原としての熱ショック蛋白質(hsp)の宿主免疫応答" 日本産科婦人科学会講演要旨集. 47(Supplement). 141- (1995)
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[Publications] Terasawa K,Sagae S,et al.: "Heat shock protein(hsp) 70 family in the carcinogenesis of ovarian cancer" proceeding of American Association of Cancer Research. 36. 1176- (1995)