1994 Fiscal Year Annual Research Report
Raft Cultureシステムを用いた口腔扁平上皮がんの機能解析
Project/Area Number |
06671803
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
進藤 正信 北海道大学, 歯学部, 助手 (20162802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 正 北海道大学, 歯学部, 助手 (80168062)
向後 隆男 北海道大学, 歯学部, 助教授 (80001949)
雨宮 璋 北海道大学, 歯学部, 教授 (80018415)
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Keywords | Raft Culture / 口腔扁平上皮がん / マトリックスメタロプロテアーゼ / 転写因子 / ets-プロトオンコジーン / E1A-F |
Research Abstract |
扁平上皮がんは口腔領域の悪性腫瘍の約90%を占めており、その浸潤・転移能が患者の予後を左右する大きな因子となっている。近年の分子生物学的検索により、これらの因子は間質や血管系の細胞外基質を分解する複数のタンパク分解酵素により修飾を受けていることが明らかになってきた。MMP-9(92kD gelatinase/collagenase)はmatrix metalloproteinaseファミリーに属し、基底膜の構成成分である4型コラーゲンを分解することから腫瘍の転移・浸潤と深く関わっていることが示されている。 今回、我々は性格の異なる2種類の口腔扁平上皮がん由来細胞(HSC3,Ca9.22)をヌードマウス舌に移植し、そのin vivoにおける生物学的活性を検索すると共に、これらの細胞をコラーゲンゲル上で培養(Raft culture)し、in vitroでの性格を分子病理学的に検索し、以下の知見を得た。 1、HSC3細胞はヌードマウス舌において高分化型の扁平上皮がんを形成した。この腫瘍は分化度は高かったが、舌において浸潤性の増殖を示し、頚部リンパ節への転移能も示した。これに対して、Ca9.22細胞は、分化度は低かったが、比較的限局性の腫瘍を舌に形成し、転移能も示さなかった。 2、2種の細胞よりmRNAを抽出し、MMP-9および、がん遺伝子etsファミリーに属する転写因子E1A-Fをプローブとし、Northern blottingを行った。その結果、HSC3細胞には両者の強い発現がみられたのに対し、Ca9.22細胞ではその発現の低下が認められた。 3、Raft cultureでは、Ca9.22細胞はコラーゲンゲル上で多層化し、扁平上皮様の形態を示し、深部への浸潤傾向は示さなかった。これに対して、HSC3細胞は細胞が単離する傾向を示し、深部へ著しい浸潤を示していた。 4.Raft cultureにおけるMMP-9、E1A-FmRNAの発現をin situ hybridizationの手法を用いて検索した。HSC3細胞では両者の発現がみられたのに対し、Ca9.22では発現はほとんど認められなかった。以上の所見は、腫瘍の浸潤・転移にMMP-9が深く関わっていること、その転写には転写因子E1A-Fの発現が関与していることを示唆するものと思われた。
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[Publications] Shindoh,M.et al.: "The corredlated expression of matrix metalloproteinase9(92-kDa gelatinase/colla-genase)and transcription factor E1A-F in tongue squamous cell carcinoma-derived cell lines." Am,J,Pathol.146. (1995)