1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト顎下腺腺癌細胞における細胞性ガン遺伝子の発現機構
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06671868
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 詔子 岩手医科大学, 歯学部, 助教授 (00048399)
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Keywords | 顎下腺腺癌細胞 / 細胞性ガン遺伝子 / EGF / EGFレセプター / チロシンキナーゼ / MAPキナーゼ / c-fos / c-myc |
Research Abstract |
1.EGFレセプター(EGFR)に及ぼすEGFの効果 ヒト顎下腺由来細胞株(HSG:human salivary gland adnocarcinoma cell line)のクローンであるHSG-AZA3細胞において、細胞増殖因子であるEGFは濃度依存的に[^3H]-thymidineの取り込みを増加させた。EGF作用の発現にEGFRの関与が推察されたので、EGFRの存在をウェスタンブロッティング法により調べた結果、約170kDaの位置にEGFRのバンドを認めた。このバンドはEGF処理後に増強した。またEGF処理細胞から抽出したRNAについてRT-PCR法により検索したところ、予想された142bpのcDNA増幅バンドがEGF処理12時間後に最大となり、その後、暫時減少した。 2.EGFR内在性チロシンキナーゼならびにMAPキナーゼ(MAPK)の検索 EGFRのチロシンリン酸化(自己リン酸化)を調べるためにウェスタンブロッティング分析を行ったところ、EGF処理5分後に170kDaバンドのチロシンリン酸化を認めた。また、EGF処理はEGFR内在性チロシンキナーゼ活性を上昇させた。最近、MAPKを中心とするリン酸化カスケードが注目されている。そこでMAPKについてウェスタンブロッティング分析したところ、EGF処理後にリン酸化されたMAPK(活性型)のバンドが検出された。また、MAPKに特異的な基質への^<32>Pの取り込み実験において、EGF投与はMAPK活性を上昇させた。 3.細胞性ガン遺伝子c-fosならびにc-mycの検索 EGFはEGFRに結合すると細胞内に情報が伝達され細胞の増殖を促進し、核内転写制御因子であるc-fosやc-mycを誘導する。そこで、特異抗体を用いたウェスタンブロッティングを行った結果、EGF処理1-3時間後にc-fosタンパク質発現の増加を認めた。また移動度の遅延したバンドが見い出されたが、これは活性型MAPKによりリン酸化されたc-fosタンパク質と推測された。さらにc-fos mRNAレベルはEGF処理30分後に急速に、そして一過性に上昇した。また、c-myc mRNAの場合にはEGF処理2時間後に上昇した。
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[Publications] 客本斉子: "ヒト顎下腺腺癌細胞株(HSG)におけるRXRファミリー発現の検討" 口腔組織培養研究会誌. 4. 115-116 (1995)
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[Publications] Sato, N.: "Proliferative signal transduction by epidermal growth factor (EGF) in the human salivary gland adenocarcinoma (HSG) cell line" Biochem. Mol. Biol. Int.38 (in press). (1996)
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[Publications] 澤野桂子: "ヒト顎下腺由来腺癌細胞における増殖とリン酸化シグナル" 口腔組織培養研究会誌. 5(印刷中). (1996)
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[Publications] 客本斉子: "ヒト顎下腺由来腺癌細胞におけるレチノイン酸レセプターによる転写活性化能の検討" 口腔組織培養研究会誌. 5(印刷中). (1996)
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[Publications] 太田稔: "ヒト顎下腺由来細胞株における増殖と分化機能(総説)" Human Cell. 9(印刷中). (1996)