1994 Fiscal Year Annual Research Report
扁平上皮癌およびその前癌病変における癌遺伝子の解析
Project/Area Number |
06671884
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松村 智弘 岡山大学, 歯学部, 教授 (00028747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 和彦 岡山大学, 歯学部, 助手 (20169080)
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Keywords | 口腔白板症 / 口腔扁平上皮癌 / 癌遺伝子 / 癌抑制遺伝子 |
Research Abstract |
ヒト健常口腔粘膜,前癌病変と言われる白板症,口腔扁平上皮癌およびハムスターの実験的舌癌における癌遺伝子および癌抑制遺伝子ついて検討した。扁平上皮癌ではc-erbB-2遺伝子の増幅およびmRNAの過剰発現は認められなかった。c-erbB-3は遺伝子の増幅は認められなかったが,mRNAおよびERBB-3蛋白質の発現量の増加を認めた。c-erbB-3 mRNAの発現量の増加を認めた扁平上皮癌はERBB-3蛋白質の産生量の増加が認められた。ERBB-3蛋白質の過剰発現は免疫組織学的にも細胞膜を中心に口腔扁平上皮癌で認められた。c-erbB-3遺伝子は,他のerbB遺伝子の様に遺伝子増幅が癌の発生に直接関与しているとは考えにくく,c-erbB-3蛋白質の過剰発現は腺癌でも報告されていることからこのシグナル伝達の異常は発癌のメカニズムに共通したものであることが示唆された。また,c-erbB-3遺伝子蛋白質の過剰発現は転写レベルで生じており,遺伝子増幅によるものでないことが示唆された。 p53遺伝子点突然変異検出率および蛋白質陽性率は,健常口腔粘膜でいずれも0%,白板症,口腔扁平上皮癌で順次増加傾向を示し,白板症症例でp53蛋白質が陽性であった半数が経過観察中に扁平上皮癌に移行したことからp53遺伝子および同蛋白質は口腔癌でも悪性化に深く関与していると考えられる。一方p53蛋白質が免疫組織学的に陽性を示した症例全てに必ずしも点突然変異が認められたわけではなかった。そこでp53蛋白質機能を不活化し蛋白質レベルをあげるといわれるMDM2蛋白質を免疫組織学的に検索したところ,p53遺伝子点突然変異が認められずp53蛋白質が陽性であった症例の64%にMDM2蛋白質の過剰発現が認められた。MDM2蛋白質の過剰発現がp53蛋白質の過剰発現を引き起こす可能性を示唆している.K-Ras蛋白質は健常上皮で陰性,異形上皮では有棘層に弱陽性,扁平上皮癌では44.8%に発現を認め,悪性か初期の関与が示唆された。
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