1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06672042
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高木 裕三 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教授 (30124697)
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Keywords | エナメル質形成不全 / 動物実験系 / ラット / HEBP / アメロゲニン / mRNA |
Research Abstract |
本研究では、小児歯科臨床で多く遭遇するエナメル質形成不全の発生機構や病態を明らかにする目的で、実験動物(ラット)の歯の形成時期に合わせて種々の環境的障害因子を作用させ、ヒトのものに類似したエナメル質の形成障害を発生させる実験系の確立を計画した。 本年度研究では、硬組織の代謝阻害剤として知られているビスホスホネイトのうち、1-Hydroxyethylidence-1,1-Bisphosphonate(HEBP)が切歯のエナメル質形成に与える影響を調べる目的で、生後5週齢の雄性ラットに1日1回、皮下注射により7日間連続投与した。最終投与後、一定時間をおいて屠殺し、上顎切歯部の組織標本を作製して光学顕微鏡およびCMR観察すると同時に、エナメル芽細胞でのエナメル蛋白質の遺伝子発現をin situ hybridization法を用いて検索した。 その結果、切歯形成端ではエナメル質基質が周期的に分泌されない部分が出現し、いわゆる形成不全型のエナメル質形成障害が発生した。この部分のエナメル芽細胞でのアメロゲニンの遺伝子の発現を調べたところ、mRNAの存在が確認された。このことから、HEBPによるエナメル質形成不全ではアメロゲニン遺伝子からのmRNAの発現には問題がなく、その後の蛋白質の合成、もしくは分泌過程が障害されていることが示唆された。なお、エナメル基質が分泌されない部分では基底膜を介して接する象牙質にも石灰化障害が観察され、歯質形成における上皮-間葉系の相互作用の重要性が示唆された。 このように、切歯でのエナメル質形成不全の誘発に成功したため、この条件を基に、現在臼歯での形成不全の誘発を試みている。
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