1994 Fiscal Year Annual Research Report
光学異性体を利用した脳内ニコチンレセプター機能のインビボ解析用放射薬剤の開発
Project/Area Number |
06672142
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐治 英郎 京都大学, 薬学部, 助教授 (40115853)
|
Keywords | ニコチンレセプター / 脳 / 光学異性体 / 放射性薬剤 / 放射性ヨウ素 / ラジオレセプターアッセイ / 体内分布 / 核医学診断 |
Research Abstract |
本研究は、アルツハイマー病などの脳神経疾患の核医学診断のために有効なニコチンレセプター機能解析用放射性薬剤を開発することを目的としている。ニコチンには光学異性体が存在し、S体がR体よりもはるかに高い脳ニコチンレセプター親和性を有する。そこで、(S)-ニコチンを母体化合物とし、標識核種として放射能的性質および臨床での汎用性に優れるヨウ素-123(I-123)を選択することとして、ニコチン誘導体のレセプターとの相互作用の構造-活性相関に関するデータに基づいた考察により従来にないピリジン環へヨウ素を導入した放射性薬剤、(S)-5-ヨードニコチンを分子設計し、これを合成、それらのレセプターとの結合に関する特性をそのR体と比較して調べた。なお、本研究においてはI-123より半減期が長く実験の容易なI-125を放射性核種として用いた。合成は、分別ろ過法により光学活性的に高純度の5-ブロモニコチンを得、これをトリブチルスズ体とし、最後にこれにI-125-ヨウ化ナトリウムを過酸化水素下反応させることによって収率70%以上で目的物を得た。ラット大脳皮質の粗シナプス膜画分を用いたラジオレセプターアッセイにて、これらの化合物の脳ニコチンレセプターへの親和性を検討した結果、(S)-5-ヨードニコチンは(S)-ニコチンと全く同じ強さ有し、それはR体よりも約80倍高かった。さらに、この化合物の体内動態をマウスを用いて検討した結果、脳に高く移行し、かつ脳内では分布に局在性が認められ、ニコチンレセプター密度の高い視床や大脳皮質に高く集積していた。さらに、この局在性は(S)-ニコチンの投与により阻害されたが、(R)-ニコチンや他のレセプターへ結合する化合物の投与によっては全く影響を受けなかった。一方、(R)-5-ヨードニコチンは脳への移行量も少なく、分布の局在性も認められなかった。 このように、今回開発した(S)-5-ヨードニコチンは脳ニコチンレセプター機能解析用放射性薬剤とし基本的に優れた性質を有すること、また(R)体は脳内での非特異的な結合を評価するのに有効であることを明らかにした。
|