1994 Fiscal Year Annual Research Report
成熟ラット肝細胞由来の新規細胞増殖阻害因子の同定とその性格付け
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06672222
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤岡 聡之 理化学研究所, 宇井特別研究室, 研究員 (20133770)
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Keywords | 肝臓細胞 / 細胞増殖 / 細胞外マトリックス / 細胞接着 / 初代培養 / アドレナリン作動性受容体 |
Research Abstract |
成熟ラットの肝細胞では,アドレナリン作動性応答はα_1受容体を介するが,この細胞を低密度で初代培養するとβ_2受容体を介するようになる(α⇒β転換)。このα⇒β転換は,培養肝細胞の増殖と相関し,さらに培養時に成熟ラット肝より部分精製した細胞膜画分の添加によって阻害される。そこで本研究では,この細胞膜に存在する増殖阻止因子を同定するとともに,その阻止機構の解明を目指す。 平成6年度においては,当初の目的であった増殖阻害因子の膜画分からの可溶化並びに精製には成功していない。その原因として,出発原料である粗膜標品の活性がロットによって大きく変動し,ある程度以上の活性を有する粗膜標品の調製法の確立に時間を要したことが挙げられる。 しかしながら,膜標品の調製法を検討する過程で,増殖阻害因子とともに増殖促進因子が,調製した膜画分に存在していることを新たに見いだした。すなわち,成熟ラット肝細胞膜には,細胞の増殖と阻害を司る因子が共存していることが判明した。 生体はその恒常性を維持するために,個々の生体反応において正と負のフィードバック機構を兼ねそなえている。細胞増殖においても正の調節因子としての各種増殖因子の作用に関する研究に加えて,負の調節因子としての増殖阻害因子の役割が注目されはじめている。しかしこれまでに研究の対象とされてきた阻害因子は,主として可溶性(液性)成分であった。これに対して,本研究で標的とする調節因子は,増殖阻害因子としてはほとんど報告例のない細胞膜成分であり,さらに,平成6年度には新たに細胞膜中に増殖促進因子が共存することを確認した。これらの知見は,細胞増殖の制御機構を解明するうえで重要であり,両因子の精製ならびに性格付けを急ぎたい。
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