1994 Fiscal Year Annual Research Report
含窒素複素環N-オキシドを用いた高反応性P450モデル系の開発と応用的展開
Project/Area Number |
06672232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 恒彦 東京大学, 薬学部, 助手 (50173159)
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Keywords | 含窒素複素環N-オキシド / ピリジンN-オキシド / ルテニウムポルフィリン / シトクロムP450 / 炭化水素 / キノン / 酸化 / 触媒 |
Research Abstract |
著者は、これまで含窒素複素環N-オキシドールテニウムポルフィリン触媒系の開発を行い、不活性アルカンの酸化等における高い有用性を明らかにしてきた。本年度は、種々の骨格のアルカン類の酸化およびこれまで検討していなかった、通常の反応系では酸化の困難な芳香族化合物を基質として用い、本反応系の適用性の検討を行った。 アルカン酸化では、cis-デカリンとtrans-デカリンの競争酸化で高いcis体選択性が見られたことから、同じ3級炭素でもその立体環境の差異が大きく反応性に影響を与えることがわかった。同様の選択性は、試みたステロイド類の酸化においても観測された。また、コレスタノンの酸化で不斉を有する20位の水酸化が起きるが、反転は起こらず、立体保持で進行することがわかった。このことは、不斉中心の酸化においても不斉選択的に生成物が得られることになり、合成化学的に有用な性質と思われる。 次に芳香環の酸化を試みたところ、シトクロムP450で主に得られるフェノール類は得られず、さらに酸化を受けたキノン類が一般に得られた。アルコキシ基のような芳香環炭素上の電子密度を高める置換基が導入されているほど、収率が高く、例えば1,3,5-トリメトキシベンゼンでは、97%の収率で2,6-ジメトキシ-p-ベンゾキノンを与えた。アルコキシ基が2置換のベンゼン類では、メタ置換体の反応性が最も高く、オルト体、パラ体では低いことから、置換位置による選択性が高いといえ、本反応系に特徴的な性質と思われる。またナフタレン、フェナンスレンのような無置換の縮合芳香環でもやや収率は低いながらやはりキノン体が得られた。 以上本反応系は、不活性炭化水素としてアルカンだけではなく、芳香族化合物の酸化も効率よく行い、選択的に酸素官能基を導入できる、特長ある系であることを明らかにした。
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[Publications] Hiro Ohtake,T.Higuchi,M.Hirobe: "The Highly Efficient Oxidation of Olefins,Alcohols,Sulfides and Alkanes with Heteroaromatic N-Oxides Catalyzed by Ruthenium Porphyrins" Heterocycles. (in press). (1995)