1995 Fiscal Year Annual Research Report
乾燥豆のペクチン質の可溶化における2価鉄イオンの作用機構
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06680027
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 泰彦 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (90041194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 真理子 鹿児島大学, 教育学部, 助教授 (10117541)
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Keywords | 大豆 / 二段階浸漬 / 2価鉄イオン / ペクチン質 / 可溶化 / 分子軌道計算 / α-D-ガラクツロン酸ダイマー / 静電ポテンシャル |
Research Abstract |
初めに、大豆のアルコール不溶性固形物(AIS)からたんぱく質およびセルロースを除去するための酵素処理の条件について検討した。この結果をもとにしてプロテアーゼ、セルラーゼを作用させて得られたたんぱく質除去AIS、たんぱく質およびセルロース除去AISを二段階浸漬・蒸煮し、煮汁中のガラクツロン酸をカルバゾール法で定量し、さらにゲルろ過クロマトグラフィーを行った。酵素処理していないAISの場合と同様に、第一段階の浸漬を硫酸鉄(II)としたものは食塩としたものより煮汁中のガラクツロン酸含量が著しく増加した。ゲルろ過クロマトグラフィーの溶出パターンから、このものは高分子のペクチン質であることが確かめられた。煮汁中に可溶化してくるペクチン質量の、硫酸鉄(II)浸漬と食塩浸漬との差は、酵素処理することによって減少し、その程度はセルラーゼ処理の場合とくに顕著であった。一方、ペクチン酸溶液の粘度は2価鉄イオンによってわずかに低下することが認められた。次に、前年度の分子力学計算の結果をもとに、α-D-ガラクツロン酸イオンの^4C_1ピラノース構造をPM3ハミルトニアンを使った半経験的分子軌道計算法により最適化し、さらに、そのダイマーの最低エネルギー構造を分子力学法と半経験的分子軌道法とを組み合わせて求めた。得られた構造の静電ポテンシャルと、別に行ったカルボキシル基に対するマグネシウムイオンの結合に関する計算結果から、金属イオンはα-D-ガラクツロン酸のカルボキシル基の酸素原子、ピラノース環の酸素原子、4位の水酸基の酸素原子に配位する可能性が大きいことが示された。今後、プロトペクチンの構成糖のポリマーでの実験、2価鉄イオンとプロトペクチン構成糖との超分子の分子軌道計算を行って、AISからのペクチン質の可溶化における2価鉄イオンの作用部位を特定していきたい。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 中村泰彦: "モノおよびジカルボン酸とマグネシウムの錯体の構造と安定性に関する非経験的分子軌道法研究" 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編. 46. 89-98 (1995)
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[Publications] 中村泰彦、田島真理子: "鉄(II)塩溶液浸漬による大豆中のペクチン質の可溶化" 日本家政学会誌. 46. 877-880 (1995)
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[Publications] 中村泰彦: "ガラクツロン酸への金属イオンの結合位置の半経験的分子軌道計算による推定" 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編. 47. 135-142 (1996)