1994 Fiscal Year Annual Research Report
食品中の水の存在状態に関する研究-主として浸透圧測定による凍結挙動の検討-
Project/Area Number |
06680044
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
野口 駿 共立女子大学, 家政学部, 教授 (50086708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 之紀 共立女子大学, 家政学部, 助手 (50226015)
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Keywords | 単糖類 / 二糖類 / 浸透圧 / 第二ビリアル係数 / 結合水 |
Research Abstract |
1.糖類の浸透圧:単糖類のリボース、グルコース、フルクトース、マンノース、二糖類にスクロース、マルトース、トレハロースについて試料濃度約1.5mol以下において氷点降下法に基づく浸透圧を測定した。いずれの糖も浸透圧/濃度の比は濃度とともに増大し、理想溶液からのずれを生じたので直線とみなせる濃度範囲内で第二ビリアル係数を算出した。またこのずれはすべて、基質-水の結合により遊離水が減少し実質濃度が上昇することによると仮定して、第二ビリアル係数からそれぞれの糖に結合する水の量を推定した。その結果、1個の遊離-OH基に結合する水の分子数は単糖類で1ないしそれ以下、二糖類で約2となり、結合水量は-OH基の数に大きく支配されることが示唆された。この結果に基づいて結合水量をe-OH基あたりに換算してみると単糖類で約1、二糖類で2よりわずかに大きい値となり、全-OH基の場合よりも糖の種類による違いが小さくなったが、どちらの立場が妥当かについては結論を得られなかった。これらの結果から、より広範囲の糖について、特に三、四糖類など重合度の増す影響について検討する必要性のあること、それがでんぷんなどの高分子多糖類の水和についての手ががりを与える可能性のあることが示され、今後の課題としたい。なお、糖水溶液の凍結温度を算出し、凍結挙動を検討したところ、凍結温度は主としてモル濃度に支配されるが、基質と水との相互作用により理想溶液より凍りにくく、その程度は種類によるほか分子量ないしは重合度によっても影響されることがわかった。 2.浸透圧とプロトンのスピン-スピン緩和速度:いずれの糖においても濃度の増加に伴って緩和速度も上昇しZimmerman-Brittin式から予測される結果が得られたが、浸透圧の場合と同様な濃度の影響を受けると考えられたので、緩和速度と浸透圧との関連について検討したところ、両者の間には高い相関関係が認められた。
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[Publications] 高橋節子: "真空調理法が鶏ささみ肉の物性および食味特性に及ぼす影響" 日本家政学会誌. 45. 123-130 (1994)
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[Publications] 佐藤之紀: "電解水で炊いた炊飯米の性状と米の浸漬状態" 日本家政学会誌. 45. 343-348 (1994)
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[Publications] 野口 駿: "食品における新しい水の科学" 食品と開発 健康産業新聞社. 29(7). 6-9 (1994)
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[Publications] 佐藤之紀: "ふろんてあ 食品成分と水の相互作用" 日本家政学会誌. 45. 723-728 (1994)
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[Publications] 野口 駿: "食品中の水" 食品と技術 食品産業センター. No.260. 3-9 (1994)
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[Publications] 野口 駿: "食品に関わる水" New food Industry 食品資材研究会. 36(No.12). 15-21 (1994)
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[Publications] 佐藤之紀: "カルシウムイオンで誘起されたアルギン酸ゲル中の水のプロトンの緩和挙動" 日本家政学会誌. 46. 261-264 (1995)
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[Publications] 野口 駿: "真空調理法の基礎に関する研究" 共立女子大学総合文化研究所年報. 第1号. (1995)