1995 Fiscal Year Annual Research Report
佐久間象山における西洋科学技術の把握と受容-蘭書とのかかわりを中心に-
Project/Area Number |
06680077
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Research Institution | Osaka Prefectural Education Center |
Principal Investigator |
東 徹 大阪府教育センター, 化学教育部理科第一室, 主任研究員 (30132939)
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Keywords | 日本科学史 / 洋学史 / 佐久間象山 / 西洋科学の受容 / 電気治療機 / ガラス製造 / ファン・デン・ブルック / ベウスヘル |
Research Abstract |
本研究では、和魂洋才的な文化受容のスローガンである「東洋道徳、西洋芸術」という言葉で有名な佐久間象山というフィルターを通して、わが国の科学技術の受容過程の問題の考察を試みた。具体的には、象山が書簡などで語っている科学技術的な話題や、彼が行なった科学技術的な事柄が、蘭書のどのような記載に基ずいているかを調査した。その結果、以下の点が明らかとなった。 ・象山が最初に取り組んだ科学技術に関係する事柄であるガラス製造について、彼の書簡での記述内容と蘭書との対応関係を調査した。その結果、象山が語っていることの大部分は、ボイスやショメールの百科事典のなかで記述されている内容と同じであることを明らかにした。また、彼が製作したガラス製品について考察を加えた。 ・象山の砲術に関する知識とベウスヘルの砲術書との関係を調査した。その結果、大砲の区分や、砲車についての象山の知識の源泉は、このベウスヘルの砲術書にあることを明らかにした。 ・象山が製作した電気治療機と深い関係があると思われるファン・デン・ブルックについて調査した。この調査を通して、彼が故郷のアルンヘムの科学雑誌に紹介していた電気治療機は、象山が製作したものと同タイプの電池と誘導コイルを使う型式のものであることを明らかにした。 ・科学技術的な内容に関する象山の発言を見るとき、蘭書からの影響とともに、彼の周囲の蘭学者達からの影響も無視しえないことを示した。
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