1995 Fiscal Year Annual Research Report
疲労性筋線維組織破壊とその修復(apoptosis)期間の検討
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06680122
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
室 増男 東邦大学, 医学部, 助教授 (80112887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 洋 東邦大学, 医学部, 講師 (30104152)
岡 和之 東邦大学, 医学部, 講師 (10120247)
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Keywords | 筋線維破壊 / アポトーシス / 筋疲労 / 伸張性収縮 |
Research Abstract |
ICA系マウス(5週齢、雌、25匹)を用い、トレッドミル上で5段階勾配の走行運動を負荷した。走路勾配は0%レベルと10%、15%、20%、25%、30%の下りと上りのそれぞれ5段階とし、走行スピードはすべて20m/分で行った。走行中にラットの前肢の上腕三頭筋(Triceps brachial TB)と後肢の腓腹筋(Gastrocnemius、 GM)から運動単位の活動を直径5μmのタグステンワイヤーを刺入し導出した。その後に、運動負荷後20時間、2日、4日経過したTBとGMの筋繊維微細構造を観察した。標本は厚さ8μmの連続切片にてヘマトキシンエオシン染色を施し顕微鏡像で観察した。 運動単位の活動様式は上り勾配と下り勾配で大きな違いを呈した。この傾向が強く観察されたのは下り勾配でのTBであった。上り勾配で漸増(Recruitment)した運動単位の活動様式は、下り勾配では振幅の小さい運動単位が漸減(Decruitment)さら、振幅の大きい運動単位が活動する傾向であった。そして筋疲労も上り勾配に比べて早期に誘発される傾向であった。 レベル運動と上り運動の両者でTBとGMに筋繊維損傷の微細構造変化はすべての時間経過において認められなかった。しかし、下り勾配の運動では前肢のTBにのみ微細構造変化が観察された。30%の下り勾配運動ではTBの微細構造変化が顕著であった。2日経過後の筋膜の破壊と部分的細胞死(apoptosis)が組織像から認められた。その部分的細胞死像の近隣に活発な食細胞の浸潤が観察された。前回の局所筋繊維損傷モデルと同様な損傷点を中心に両遠位方向に筋繊維貧食組織像が観察された。 下り勾配運動で観察された顕著な筋繊維微細構造損傷は、活動筋の収縮タイプすなわち伸張収縮にきわめて強く依存している可能性が示唆された。しかしこの破壊はきわめて狭い局所に観察されるのみであることから伸張収縮に特異的に起こるとものではなく、preactivationからactivationの収縮タイミングのずれがこの伸張性収縮に確率的に起こりやすいことが推察される。この発生確率を高くする要因は漸減(Decruitment)さら残っている運動単位に強い収縮が強いられるために筋繊維の早期疲労が起こり、収縮タイミングがずれることにあるものと思われる。狭い局所に起こる筋繊維微細構造損傷によって修復再生の経過が早く完了することを筋組織が利用し、運動に対する神経-筋組織の総合的適応を構築させるのに役立てていることが示唆された。
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