1995 Fiscal Year Annual Research Report
葬送・墓制文化の移入における国境のフィルター作用と国内での文化変容過程
Project/Area Number |
06680145
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Research Institution | KAGAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
稲田 道彦 香川大学, 教育学部, 教授 (70133155)
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Keywords | 外国人墓地 / 文化変容過程 / 葬制・暮制文化 / 国境 / フィルーター作用 |
Research Abstract |
江戸時代末期に外国人の居住が始まった長崎、横浜、神戸、函館の墓地の変遷を調査し、彼らが故国の文化をどのように変遷させたかを調べた。その際に日本の国境は、文化に対してどういう作用をほどこしたか、その変化は文化の質、民族や集団の大きさによって差があるのか、他国の国境ではどうかなど、いくつかの観点で、文化変容過程を考察した。 主に西洋人、中国人、韓国・朝鮮人という3つの集団をとりあげた。西洋人はヨーロッパ大陸では火葬の導入により葬儀・墓地形式が変化したが、日本において導入された時の様式の土葬と石碑を建てる習俗が守られた。しかし最近の埋葬事例は減少している。特殊な事例として第2次世界大戦による死者の埋葬地がある。世界中が一定の形式に従う英連邦墓地と、戦争後米兵と日本人女性の間の幼児の死者の墓地は従来の様式と相違する点があった。 東アジアの人々は祖先崇拝の文化を共有し、死者の処遇を大切な問題と考える。中国人は当初は出身地の習俗を保持しようとした。しかし会葬はごく初期に断念した。また心理的抵抗の大きい火葬も1970から80年代に受入れ、日本の共同墓地と同様の墓地システムをとる所が多くなっている。同じ華僑の墓地でも、タイのように故国の方式を守った地域と違い、日本化した要因には、祖先崇拝の墓地システムと、土地経済的な要因の存在が大きいと考える。また日本でも居住地によりその変化の過程には差があった。そこには国境のフィルター作用に加え、集団の社会的特性を考慮する必要がある。韓国・朝鮮人は最大の外国系集団でありながら、前二者のように少数例を除いて専用墓地を形成しなかった。韓国に遺体や火葬骨を運んだり、日本の公共墓地に埋葬することを選んだ。 日本国境という文化を透過させるフィルターには日本文化の特質がある。しかしそれは文化だけではなく、社会、経済、歴史という要因が重層的にからみ、形成されたものである。
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Research Products
(1 results)