Research Abstract |
本研究の目的は,「戦後処理期」以降の日本工業の地域的展開を「企業システム」による「国土(空間)の組織化」,すなわち「地域のシステム」化であることを実証することであった。前年度では,調査対象年次である昭22,35,44,59の4か年次に亘る日本工業の地域的展開を「製造業事業所数の市区群別集中集積状況」として把握した(前年の2か年次については,既に公刊済みであるが,後半の2か年次のものは投稿中である)。今年度は,これら日本工業の地域的展開の大きな推進力になったいわゆる企業グループの結成・成長,更にグループ傘下の企業体(含む,関連企業も)の事業所の空間配置を把握することによって,「企業システム」による「国土(空間)の組織化」,つまり「地域のシステム」化を検証した。その際,「企業システム」を把握する指標として「株式の所有状況」に,「地域システム」把握の指標としては,本社・支社・工場・営業所・出張所等の事業所の企業内位置に,それぞれ着目した。また,具体的に分析を行った企業グループは,三井・三菱・住友・三和・旧勧銀・旧安田・古河・川崎のいわゆる8大企業グループと,それら各大企業グループをそれぞれ構成している中核となっている企業体個々(たとえば,三井の「二木会メンバー」23社のような)の形成している企業サブグループ(63)とである。その結果,下記の「川崎グループ」の内容でみる事柄は,いずれの企業グループ並びに企業サブグループにおいても認められることであった(もちろん,分析の対象時期が,まさしく日本経済の発展充実期とも符号していることを前提として)。つまり,製品市場の全国化,それに伴う設備投資から生じる銀行・証券・生損保の大株主化,商事・商社部門の強化に伴う系列事業体のネットワーク化,更にネットワーク化に伴う地域的集積相互間の連続強化などが,「フルセット型産業」体制と,それに照応した地域システムを産み出している。
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