1995 Fiscal Year Annual Research Report
日本の湖の水収支特性とその類型化に関する自然地理学的研究
Project/Area Number |
06680160
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森 和紀 三重大学, 教育学部, 教授 (60024494)
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Keywords | 湖沼 / 浸透湖 / 開放湖 / 水収支 / 地下水漏出 / 湖盆形態 |
Research Abstract |
わが国における湖沼の水収支特性を明らかにし,その類型化を図ることを目的として,「涵養-流出」機構の差異に基づく湖沼の分類を行い,あわせてそれぞれの水収支型に属する典型的な湖沼の事例研究を実施した。得られた成果は下記のように要約される。 1.わが国の湖沼総数663の中から湖盆の容積が10,000m^3以上ある333の湖沼を抽出し,各湖沼の水収支特性に基づく類型化を汎日本的な観点から試みた。対象湖沼の水収支型の特徴により,浸透湖・開放湖と汽水湖の3タイプに分類し,さらに浸透湖と開放湖については流入河川の有無によって細分類した上,位置と湖盆形態に関する一覧表を作成した。各分類に属する湖沼の数,および湖盆容積の累加曲線から外挿法によって算出される容積の総量は次のとおりである。a.浸透湖:129ヶ所・10.88km^3(a-1.流入河川なし;107ヶ所・3.59km^3,a-2.流入河川あり;22ヶ所・7.29km^3).b.開放湖:177ヶ所・31.86km^3(b-1.流入河川なし;33ヶ所・0.07km^3,b-2.流入河川あり;144ヶ所・31.79km^3).c.汽水湖:27ヶ所・2.55km^3.総計:333ヶ所・45.29^3。 2.日本のような湿潤気候下に位置する浸透湖では,地下水漏出による湖水の消失によって水収支が成立しており,湖の流域外にみられる湧水の存在が特徴的である(例:摩周湖,倶多楽湖,池田湖等)。これに対し火山地域の堰止め湖では,地形的分水界と地下水分水界とが一致しない例が多く,湖の涵養源として,湖底への地下水湧出が重要な部分を占めている(日光湯ノ湖)。水収支の算定精度を高める目的で水文期間を結氷期にとることは,降水量・蒸発散量・水位変化を無視しても差し支えない条件が加わることから,有効な方法である。 湿潤熱帯地域の湖沼,および湖面からの蒸発量が流出量を上回るような乾燥地域の湖沼の水収支特性と本研究の成果を比較対照されることが,今後さらに研究を展開させていく上で重要である。
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