1994 Fiscal Year Annual Research Report
北海道の高山帯における周氷河現象とその環境に関する研究
Project/Area Number |
06680164
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 伸幸 北海学園大学, 教養部, 助教授 (20202153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 謙 北海学園大学, 教養部, 教授 (70128817)
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Keywords | 大雪山 / 高山帯 / 温度観測 / 周氷河環境 / 凍土 / 周極地域 / 湿原植物群落 / ア-スハンモック |
Research Abstract |
平成6年度には、大雪山中央部において前年度より行っている気温・地温観測を継続するとともに、新たに日射計、風向・風速計を設置した。さらに、羊蹄山、羅臼岳、利尻岳の各山頂部にも温度計を設置し、気温観測を開始した。なお、規則に観測を開始した3地点では、国立公園内での工作物設置に関する許可の取得に時間がかかり、観測機器の設置を秋季におこなったのみで、気温データの回収は行っていない。 大雪山高山帯(2120m)での気温観測結果によると、平成5〜6年の冬季には数年来の暖冬傾向とは異なり、1987年や1988年の冬季に匹敵するような低温傾向で推移した。最寒月(1月)の平均気温は-19.9℃であり、最低気温は-29.1℃を記録した。また、風衝砂礫地における地温観測の結果によると、9月中旬下から10月上旬にかけて凍結融解を繰り返したのち、土壌凍結が次第に進み、11月下旬以降は気温の大幅な低下に伴って急速に凍土も発達していった。一方、土壌融解は5月上旬から始まり、しばらく凍結融解を繰り返した。ところで、平成4年から残雪斜面上に設置していた温度計を平成6年になって回収することができた。平成5年夏季は冷夏であり、温度計は積雪から解放されなかった。その結果、設置地点での温度は、年間を通して0±1℃で推移し、ほとんど凍結融解を示すような変化は認められなかった。このことから、寒冷地域における積雪の有無は、地形形成にきわめて重大な影響をもたらすということがあきらかになった。そのほか、ア-スハンモックの分布調査から、消雪時期や凍土の融解時期がア-スハンモックの形成には重要な意味を持つことが示唆された。 植生調査により高山帯における蘚苔類のデータが充実された。その結果、群落パターンが周極地域のものであることが再確認され、湿原植物群落の成立には、凍土の存在が大きな影響を及ぼしていることも明らかになった。
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