1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06680255
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田邉 隆 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (80155192)
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Keywords | 音楽表現 / 評価 / 熟達過程 / 音声分析 / 主成分分析 / FFT / スペクトラム |
Research Abstract |
音楽表現の評価では、主観的な評価に終始する傾向が強い。しかし本研究は、音楽表現の熟達過程を客観化することを目的としている。また、音楽表現のなかで「音声(女声)」を標本とし、熟達過程の客観化を試みた結果、下記の手法で求められるとの結論を得た。即ち、音楽解析データを主成分分析することにより、熟達過程の客観的な提示が可能となった。 1.音声標本の「EFT(高速フーリエ変換)」による処理。 2.FFTデータ(数値)の主成分分析とその結果の図示。 本研究の着眼は、「音楽表現の差異」を「音声の倍音構造の差異」とする点にあるが、主成分分析の結果を二次元グラフで図示することにより、表現の初期段階からの変化を「熟達過程の軌跡」として表すことが可能である。また、個人内における上達過程の変化(軌跡)を示すばかりではなく、他者の音声との位置関係をも図示することができた。 今後は、音声データをさらに蓄積(データーベース化)することにより、初心者と熟達者との相違点解明や、声種判定の基礎資料提供について科学的に明示し、実際の発声指導への応用について研究を発展させる予定である。なお本研究は、熟練した感覚(聴覚)による評価を否定するものでなく、むしろ熟達した感覚に一定の方向性を見い出していることを裏付けている。このことは、従来主観的な評価が多いとされる音楽表現において、「表現が示す方向性」と「その方向に対する意味付け」を考察することにより、評価方法について、新たな視点が見い出せると考える。
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