1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06680276
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
酒井 順子 東京外国語大学, 留学生日本語教育センター, 助教授 (10225758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西郡 仁朗 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (20228175)
姫野 昌子 東京外国語大学, 留学生日本語教育センター, 教授 (80014489)
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Keywords | 非漢字系留学生 / 認知科学 / 連想法(イメージ法) / 長期記憶法 / 再生法 / 弁別法 / CAI / ハイパーメディア |
Research Abstract |
漢字を初めて目にする学生、つまりゼロからスタートした非漢字系留学生にとっては、漢字習得に膨大な時間を費し、常用漢字をマスターするには至難の技である。初級漢字では、これらゼロビギナ-の留学生にとって、よりインパクトの強い効果的な教授法の必要性を感じ、初級段階から漢字の形態要素を考慮し、記憶のメカニズムに配慮した効率的な認識、筆記をさせることが不可欠である。まず酒井が以下に示す項目を認知科学の面から考察し、学習者の自立学習を促進できるよう、漢字指導における新しい方向性として、四つの教授法を考案し、分析を試みた。 I.「連想法・イメージ法」⇒ここで言う連想法・イメージ法はイラスト(アニメーション)による漢字の提示を指す。漢字の成り立ちを指導することは認知段階における学生の習得効率を高めていく上で、効果が得られた。画数の多い複雑な字形であっても、漢字導入時に字源(説文解示)または酒井オリジナルの記憶法によるイラスト(アニメーション)を見せると同時に指導上のポイントを提示することで、学習者がイメージとして字形を視覚的に捉えやすく、漢字の定着度が高められることがわかった。II「長期記憶法」⇒長期記憶とは一度聞いただけで記憶が保持され、忘れにくい方法のことであり、酒井考案の“唱えことば"がこの長期記憶法にあてはまる。これは視覚的記憶力だけに頼るのではなく、同時に聴覚の感覚を訓練することにもつながっていく。III.「再生法」⇒ここで言う再生法とは部首別フィードバックによるものである。新出漢字導入時に既習漢字の復習を兼ねて、部首の整理を行い、提示する方法で効果を上げている。IV.「弁別法」⇒過去7年間にわたる東京外国語大学留学生日本語教育センターでの漢字系・非漢字系学習者の誤写・誤表記の調査を行い、資料を作成し、分析を試みているが、これらの資料を基に教師が指導上のポイントとして把握すべき点を提示できるよう工夫している。これら四段階の「記憶法」による指導をまず“漢字早おぼえカード"として紙メディアで作成したものをCAI対応として、「データベース型ハイパー漢字字典」へと、より汎用性の高いものへ発展させていった。(初級200漢字について完成している) ハイパー漢字字典の各スタックの構成は西郡主導のもと、以下に示す機能を装備している。1.英語、タイ語、インドネシア語対応の漢字の意味と用例提示2.読み方の音声提示3.筆順の動画提示4.アニメーションによる覚え方の提示と唱えことばの提示。5.誤字をもとにした弁別学習である。なお学習者・教師用検索システムとして、読み方などから、漢字が検索でき、それぞれの漢字のスタックへ移動できる。学習したい漢字を任意に選び出せる機能がある。
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