1994 Fiscal Year Annual Research Report
非線形工学による沸騰水型原子炉の異常診断に関する基礎的研究
Project/Area Number |
06680457
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 雅司 北海道大学, 工学部, 助手 (70091478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 正邦 北海道大学, 工学部, 教授 (00001313)
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Keywords | 沸騰水型原子炉 / 原子炉出力異常振動 / 安定性診断 / 非線形工学 / カオス / 情報理論 / 測度論的エントロピー |
Research Abstract |
本研究は、沸騰水型原子炉(BWR)の局所的な冷却材流動挙動を観測し、この運動のカオス指数を観測するならば、BWRの不安定性診断が可能であるのではと考え、これを実現するための基礎的研究である。これまでのBWRの非線形動力学解析において扱われなかった測度論的エントロピーに注目し、これをカオス指数とした非線形運動の解析を行った。 測度論的エントロピーは、非線形系の運動がアトラクター上で生み出す軌道の多様さを表現するもので、カオス運動の場合には正の値を持つ。本研究では、一変数の時系列データから測度論的エントロピーを算出する計算プログラムPROBコードを開発した。開発したPROBコードを、カオスのモデルとしてよく知られ、その特性が研究されているレスラ-系の非線形運動の解析に適用した。この解析から、カオス運動を始めとする様々な非線形運動を判定できることを示し、測度論的エントロピーによる非線形解析の妥当性を確認した。また、プログラムコード解析上の特性を調べ、実際の適用の際の指針を得た。 雑音発生器で発生させた雑音信号(確率論的雑音)の解析から、雑音信号の遅れ座標系の次元が高次元となることが示され、次元の観測からカオス信号と雑音信号とを識別できることが分かった。雑音信号中にカオス信号成分が含まれる場合の解析から、カオス信号が含む場合には、遅れ座標系の次元、遅れ時間、及び相互情報量の関係において、低次元の遅れ座標系で顕著な特徴が生じることが分かった。 最後に、本解析手法をMarch-LeubaのBWR数学モデルに適用し、カオス運動とリミット・サイクル運動を識別できることを示した。
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