1994 Fiscal Year Annual Research Report
修復欠損哺乳類細胞を用いた有機結合型トリチウムの生物効果
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06680482
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小松 賢志 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (80124577)
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Keywords | トリチウム / scid / Ingenoマウス / 有機結合型トリチウム / トランスジェニックマウス / 修復欠損細胞 / 生物学的効果比 / lacZ遺伝子 |
Research Abstract |
トリチウムはDNA構成元素の水素の同位体である。従って、DNA内部被曝による生物効果を総合的に評価するにはX線やγ線のような外部線源との定量的比較、そしてトリチウム被曝によるDNA分子損傷の特異性比較の両面が重要である。本年度は、前者の目的のために線量率効果や生物学的な修飾効果のないDNA修復欠損細胞系の確立、そして後者の目的のために解析用DNAをゲノムに導入したトランスジェニックマウス細胞の開発を行った。 1.Ingenoマウス:マウス卵に突然変異検出用遺伝子lacZを導入してトランスジェニック(Ingeno)マウスを作製した。トリチウムなどの放射線照射後、細胞DNAをクローニングサイトのHindIIIで分解後に大腸菌に回収してlacZ遺伝子の変異を調べる方法である。Ingenoマウスは従来のトランスジェニックマウスの問題点を解決したすぐれた系であるが、尚改良すべき幾つかの点がある。今回、(1)Ingenoマウス肺の線維芽細胞の初代培養に成功、続いてSV40ウィルスの感染による不死化細胞を樹立した。(2)lacZ遺伝子回収の改良を行い、既存の方法の10倍程度回収率が向上した。(2)lacZ遺伝子変異体だけが生育できるポジテブセレクション法を試みた結果、アッセイできる菌体数が10倍以上に増加した。 2.マウス重症複合免疫不全症scid突然変異体 DNA修復欠損細胞として、マウスscid細胞株SC3VA2をIngenoマウス同様に樹立した。scid細胞は放射線高感受性でそのDoは0.72Gyであった。しかし、scidは放射線誘発DNA2重鎖切断の修復態を多少残している。今回、温熱処理との組合わせによるトリチウム生物効果の鋭敏な検出法が確立した。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] K.Komatsu: "Inhibitory effects of Rooibos tea,Aspalathus linealis,on X-ray-induced C3H10T1/2 cell transformation." Cancer Lett.77. 33-38 (1994)
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[Publications] K.Komatsu: "The scid factor on human chromosome 8 restores both V(D)J recombination and double-strand break repair." Canser Res.(In press). (1995)
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[Publications] H.Kimura: "Cultured cells from a severe combined immunodeficient mouse have a lower than normal rate of repair of potentially lethal damage sensitive to hypertonic treatment." Radiation Res.(In press). (1995)
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[Publications] 小松賢志: "Nijmegen breakage syndrome 患者細胞の放射線感受性と遺伝子相補性" 広島医学. 47. 77-80 (1994)
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[Publications] 小松賢志: "ルイボス茶の特性と生体への作用" Fragrance Journal. 7. 85-88 (1994)
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[Publications] 小松賢志: "茶カテキンEGCgによる放射線誘発C3H10T1/2細胞がん化能の阻害作用" 長崎医学会雑誌(In press). 69. (1995)
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[Publications] 小松賢志: "In“核融合研究"名古屋大学出版会" 晩発効果・発ガン(In press), (1995)
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[Publications] 小松賢志: "In“臨床DNA診断"Ed by 古庄敏行 et al.金原出版" アタキシア・テランジェクタシア(In press), (1995)