1995 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における高分子溶存有機物の動態を支配する微生物代謝過程
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06680489
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Research Institution | Ocean Research Institute, University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 俊 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40183892)
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Keywords | 海洋炭素循環 / 微生物 / 溶存有機物 / コロイド / タンパク質 / 分解 / 細菌 / サブミクロン粒子 |
Research Abstract |
1.還元的メチル化法により高比活性に放射標識したモデルたんぱく質(BSA,牛血清アルブミン、分子量66kD)を用い、海洋細菌による高分子加水分解速度を高感度かつ比較的簡便に測定する方法論を完成させた。 2.放射標識BSAをポリスチレンの人工微粒子(径0.1-1.5um)に吸着させ、それを、細菌に分解させる実験系を新たに構築した。これにより、粒子の数やサイズを厳密に制御して、分解速度を明らかにすることが始めて可能になった。 3.上述の方法論を応用し、単離海洋細菌、海洋細菌混合集団、および、天然海水中の微生物群集による、モデル高分子溶存有機物の分解速度の解析を行った。その結果、分解速度が粒子のサイズに強く依存し、そのパターンが、粒子間の衝突確率を求める物理モデルの予測結果と定性的に一致することが明らかになった。 4.遊離のたんぱく質に比べ、微粒子に吸着したたんぱく質は、その分解速度が著しく低下した(1/(10)-1/(200))。低下の程度は、細菌の種類に依存し、細胞外酵素系の特性が、吸着たんぱく質の分解に大きな影響をおよぼしているものと推察された。 5.以上の結果は、海水中に多量に存在する、サブミクロン粒子およびコロイドが、溶存有機物の分解性の低下に大きな役割をはたしているという本研究の作業仮説を支持した。この知見は、海洋炭素循環の仕組みと、海洋生態系の安定性を考えるうえで重要な意義を持つ。その内容は国際学術誌に原著論文として投稿し、受理された。研究費の主要な支出項目は、実験消耗品費と研究討論の旅費である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Toshi Nagata: "Bacterial degradation of protein adsorbed to model submicron particles in seawater" Marine Ecology Progress Series. (印刷中).
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[Publications] Toshi Nagata: "Biogeochemical Processes and Ocean Flux in the Western Pacific(分担執筆)" Terra Scientific Publishing Company, 672 (1995)
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[Publications] 永田俊: "大気水圏科学からみた地球温暖化(分担執筆)" 名古屋大学出版会(印刷中),