1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06680502
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
久保井 徹 静岡大学, 農学部, 教授 (20132847)
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Keywords | 土壌 / 植物 / 酸緩衝能 / 硝酸イオン / 硫酸イオン / 重炭酸イオン / 植物イオン吸収と排出 |
Research Abstract |
土壌の酸緩衝作用に、植物や微生物がどの程度関わっているかを明らかにするために、以下の検討を行った。 1)土壌の化学的緩衝能と微生物の寄与:植物の栽培も可能なカラムを用いて数種の土壌の化学的酸緩衝能を測定した。陽イオン交換、炭酸重炭酸塩平衡、酸吸着(消滅)などの緩衝機構に土壌間差が認められた。また、硝酸と硫酸を微生物的に不活性な過塩素酸と比較することにより、酸緩衝作用への微生物の寄与を推定した。 2)植物による培地pHの変化能:培養液のpH連続測定システムを構築してpH変化を測定し、トマトやタバコはpHを上昇させ、チャやオオムギは低下させるなど種間差を明らかにした。pHの低下にはプロトンATPaseが関与していたが、上昇にはイオン吸収の影響が大きかった。 3)植物の栽培による土壌の酸緩衝能への影響:1)のカラムに植物を栽培し、非栽培区と比較した。川砂にオオムギを栽培した結果から、植物による酸緩衝能の増大が明らかに認められた。植物の寄与は、硝酸(pH3.3〜3.7)のみを与えた場合には10mmol/kgの酸負荷相当量、培養液と酸(硝酸、硫酸)をともに与えた場合には20〜30mmol/kgであった。トマトの酸緩衝能は、オオムギより弱かった。カラム流出液から、植物による緩衝作用は(1)重炭酸イオンの放出と(2)硝酸イオンの吸収が主因であり、老化時には(3)カリウムとアンモニウムイオンの放出が関与していることが判明した。実土壌を用いた場合にも上記(1)と(2)の現象が認められた。さらに酸性化土壌に栽培したところ、(1)と(2)の現象とともにpHが著しく上昇した。 以上に結果から、植物は主として酸の消滅と炭酸重炭酸塩平衡の強化によって土壌の酸緩衝作用を高めており、水耕栽培系で酸を放出する植物種でも酸耐性が強ければ緩衝作用をもつと結論した。
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[Publications] 久保井徹: "増殖能の高いチャ細胞培養系の確立" 茶業研究報告. 80. 1-14 (1995)
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[Publications] 久保井徹: "下水汚泥連用土壌に対する酸負荷の影響" 日本土壌肥料学雑誌. 66. 552-559 (1995)
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[Publications] 久保井徹: "土壌カラム法による下水汚泥連用土壌の酸緩衝機構の解析" 日本土壌肥料学雑誌. 66. 655-662 (1995)