1995 Fiscal Year Annual Research Report
環境ストレスの藻類群集に及ぼす影響評価に関する基礎的研究
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06680525
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
笠井 文絵 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (70224376)
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Keywords | 環境ストレス / 藻類群集 / 除草剤 / 耐性 / 増殖速度 / 緑藻 / セネデスムス / 河川 |
Research Abstract |
前年度までの研究から,緑藻セネデスムスの感受性株と耐性株の増殖は除草剤シメトリン濃度が10-15μg/Lのところを堺にして,それ以下だと感受性株の増殖速度が耐性株を上回るが,それ以上の濃度だと耐性株の増殖速度の方が速いことを示した.除草剤の種類によって毒性が異なるため,この結果を他の除草剤に当てはめるためにこの濃度でどのくらい増殖が抑制されるかを基準とした.セネデスムスのこの値はほぼEC50値(50%増殖を抑制する値)に相当した.次にこれを基準にして河川の除草剤濃度で影響を受ける藻類のグループと影響を受けないグループを予測した.今までに知られている限り,珪藻類は除草剤に耐性が高い.また,緑藻類の内,特にボルボックス目は除草剤に対して高い感受性を有することが知られている.これらのことから,検証に用いた河川では,比較的高濃度の除草剤が検出されるものの,その濃度は高々数μg/L程度なため,影響を受けるのは感受性の高いグループ,つまりボルボックス目だけであろうことが予測された. 本年度は調査河川から分離した藻類株の除草剤感受性を,調査河川で最も大きなストレスとなっていると考えられる2つの除草剤,シメトリンとプレチラクロールについて調べた.ボルボックス目のクラミドモナス属や珪藻のキクロテラ属のEC50値が,河川水中の除草剤濃度の増加に伴って増加した.また,これら2分類群のシメトリン耐性の増加はプレチラクロール耐性の増加と相関している思われた.この結果から,自然環境としては除草剤濃度が比較的高い様な調査河川においても,非常に高い感受性を持ったグループのみが耐性に入れ替わるというように,藻類群集は除草剤の弱いインパクトしか受けていないと考えられた.しかし,このような河川の藻類群集は,水田藻類を起源としている可能性もあり,既に高い耐性を持った藻類が生息しているのかもしれない.
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