1995 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキシダーゼの立体構造に基づいた反応機構の解明
Project/Area Number |
06680654
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福山 恵一 大阪大学, 理学部, 教授 (80032283)
|
Keywords | ペルオキシダーゼ / X線結晶解析 / 蛋白質の立体構造 / ヘム鉄の配位構造 |
Research Abstract |
本研究では不完全菌Arthromyces ramosus由来のペルオキシダーゼ(ARP)をとりあげ、以下の成果を得た。 1.ARPをコードしている領域を含むゲノムDNAとcDNAの塩基配列を決定した。さらにARPの一次構造解析などの結果とあわせて、N末端には20残基からなるシグナルペプチドがあり、成熟酵素はピログルタミン酸からはじまる344アミノ酸残基からなっていることを明らかにした。またARPのcDNAを酵母中で発現させた。 2.ARPにI_3^-およびCN^-をヘムに結合させ、その複合体結晶の構造を高分解能で決定した。この解析結果より、I_3^-およびCN^-はヘムの遠位側に結合していることを確認した。CN^-は、bent型のコンフォメーションをとり、遠位ヒスチジンと水素結合している。CN^-およびI_3_-が結合すると、遠位ヒスチジンのコンフォメーションが変化したが、チトクロムcペルオキシダーゼがフッ素を結合したりcompound Iに変換する際に見られたようなアルギニン残基の大きな動きはなかった。CN^-が結合したARP(低スピン型)ではヘム鉄はヘム面内に位置しているが、I_3^-が結合したARP(高スピン型)ではヘム鉄はヘム面から約0.2Å近位側にずれていた。 3.アンモニアの有無およびpHにより、ARPの吸収スペクトルが大きく変化することを示した。さらにpHが低い環境ではヘムが5配位構造をとり、ヘム鉄がヘム面より近位ヒスチジン側に0.19Åずれていることを明らかにした。これにより生理条件下ではARPのヘム鉄は5配位構造の高スピン状態をとっていることを示すと共に、pHが高いとアンモニアを結合することを証明した。また一般にペルオキシダーゼのヘム鉄の遠位側に見られる水分子の位置は、ヘム鉄との相互作用というよりむしろ遠位ヒスチジンのイミダゾール環の配向により決まっていることを示した。 4.ARPはカルシウムイオンを結合しており、これまでのX線解析から推定されていた2個のカルシウム結合部位を、今回X線異常散乱法で確認した。
|
-
[Publications] 国島直樹: "糸状菌ペルオキシダーゼの構造と機能" バイオサイエンスとインダストリー. 53. 857-863 (1995)
-
[Publications] N.Kunishima: "Peutocoordination of the heme iron of Arthromyces ramosus perxidase shown by a 1.8Å resolution crystallographic study at pH4.5" FEBS Letters. 378. 291-294 (1996)