1995 Fiscal Year Annual Research Report
酵素反応サイクルの速い相の熱力学的駆動力はエントロピー増大か?
Project/Area Number |
06680656
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Research Institution | KYUSHU INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
児玉 孝雄 九州工業大学, 情報工学部, 教授 (30034200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 正宏 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (40211122)
小松 英幸 九州工業大学, 情報工学部, 助手 (90253567)
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Keywords | サーモカップルアレイ / ストップトフローカロリメータ / キモトリプシン / シミュレーション / 反応中間過程 / アシル化 / 脱アシル化 / ペプチド基質 |
Research Abstract |
時間分解能と耐久性に優れたサーモカップルアレイを温度センサーとしたストップトフローカロリメータを構築し,データ処理プログラムの改良を行いながら,酵素親和性の高いN-benzoy1-1-tyrosine ethylester(BYE)を基質としたα-キモトリプシン反応を解析した.熱測定の結果から,反応中間過程のΔHを求めるために,1)定常状態解析による各反応中間過程のの速度定数の決定,2)全反応熱の測定,3)前定常状態のストップトフロー熱測定,4)反応生成物および反応中間体の消長のシミュレーションと中間過程ΔHの決定.その結果,見かけの全反応ΔHはBYE濃度に比例し,緩衝液の中和熱を補正するとほぼ0となった.前定常状態熱測定では,フローストップ時点までに完了する速い吸熱過程に引き続く速い発熱が観測され,その後ほぼ定常状態とみなせる遅い発熱が基質が消失するまで続いた.これらの3つの熱変化過程の速度と大きさは,基質濃度に応じて変化した.各ステップのΔHの値を上述の方法で求めたところ,酵素基質複合体形成過程は吸熱反応(85kJ/mol),アシル化過程は発熱反応(-120kJ/mol),アシル化酵素の加水分解過程は吸熱反応(30kJ/mol)となった.これまで,α-キモトリプシン反応の熱測定は多くの報告があるが,阻害剤の結合熱,非生理的基質の加水分解熱,時間分解が全く期待できないために反応条件を複雑に組み合わせた実験などがほとんどであり,反応機構を考えるためのデータとしては不十分である.これらの研究にくらべ,本研究ではペプチド基質により構造が近いBYEを用い,その加水分解過程を高性能のカロリメータで測定し,反応中間過程の熱力学的特徴を明らかにすることができ,今後の研究に重要な寄与をすると考えられる.
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