1994 Fiscal Year Annual Research Report
胚性癌腫細胞の分化誘導におけるFGFとFGFレセプター亜種の発現と機能の解析
Project/Area Number |
06680701
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
瀬尾 美鈴 京都産業大学, 工学部・生物工学科, 助教授 (60211223)
|
Keywords | FGF / FGFレセプター / 神経分化 / レチノイン酸 / EC細胞(胚性癌腫細胞) / 分化誘導 |
Research Abstract |
多分化能を持つ胚性がん腫細胞Embryonal carcinoma(EC)P19細胞の細胞塊を形成し、レチノイン酸RAで処理することにより神経細胞への分化を誘導することが出来る。神経細胞の分化誘導過程におけるFGFとFGFレセプター亜種の果たす役割について明らかにするため、これらの遺伝子の発現についてRT-PCR法を用いて解析した。FGF(Fibroblast Growth Factor)は広範な標的細胞の増殖または分化を促進する多様な生理作用を持つタンパク性の因子であり、哺乳動物においては現在までに9種のFGFファミリーのメンバーが知られている。FGFのレセプターについては、4種の異なる遺伝子にコードされているFGFR-1,FGFR-2,FGFR-3,FGFR-4が見出されている。未分化P19細胞ではFGF4、5、6、8およびFGFR1、2、3の遺伝子が発現していた。10^<-6>MのRAで神経細胞への分化を誘導すると、FGF2、6、9の発現が上昇し、FGF4、5、8の発現は減少した。しかし、RAを添加しない場合でもFGF4の発現は低下した。神経細胞誘導におけるFGF2とFGF9発現の上昇は二相性であり、細胞塊形成時すなわち分化方向決定時と組織培養皿において分化した神経細胞とグリア細胞が発現する時に見られた。またFGF6は細胞塊形成時には発現は上昇せず、組織培養皿において発現が上昇した。FGF2、9は分化方向決定時と分化した神経細胞やグリア細胞の機能維持に関与していることが示唆された。レセプターについては、FGFR1の発現はほとんど一定していたが、FGFR2とFGFR3の発現が神経細胞への分化誘導過程で上昇した。FGFR4は一過性で細胞塊形成時に発現が認められたが、その発現は非常に弱かった。本研究では、マウスP19細胞にFGF9が発現していることを初めて明らかにし、そのcDNAをクローニングして延期配列を決定し、日本DNAデータバンクDDBJに登録した(D38258)。ラットFGF9の塩基配列とは98.2%、ヒトFGF9とは92.4%のホモロジーがあり、アミノ酸配列はラットと100%、ヒトとアミノ酸1個(N末端から9番目のアスパラギン→セリン)だけ異なっていた。この配列の保存性の高さは、FGF9の機能が非常に重要であることを示唆している。
|