1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06680709
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
米原 美奈子 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 細胞生物学研究部門, 研究員 (10124471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 清治 (財)東京都臨床医学総合研究所, 細胞生物学研究部門, 研究員 (40190532)
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Keywords | HSP90 / シャペロン |
Research Abstract |
HSP90は2量体として存在しているが、精製したHSP90を43℃以上に加熱すると、オリゴマーとなる。これは熱処理によって構造変化したHSP902量体同士が結合した結果と考えた。そこで、もし加熱されたHSP90分子の近傍に同様に構造変化をした他のタンパク質が存在すれば、HSP90はそれらとも結合すると予想した。加熱したHSP90とその標的タンパク質との相互作用を詳しく解析するために、まずジヒドロ葉酸還元酵素(以下DHFRと略す)を用いてHSP90の基質結合性を解析した。DHFRは、グアニジン塩酸処理で変性する。しかし希釈することにより自発的にフォールディングし、活性が回復する。しかしHSP90を含む液で希釈し、同時に加温するとDHRFの自発的フォールディングが妨げられた。これは、HSP90とフォールディング途中のDHFRが結合するためであること、またHSP90と結合したDHFRはATP存在下でのみ、GroEによりHSP90から遊離して活性が回復することを実験により示した。これらの結果は、HSP90がフォールディング中間体と結合すること、そしてHSP90との結合によって基質蛋白質がフォールディング可能な状態を維持していることを示唆している。次にホタルのルシフェラーゼを基質蛋白質として実験した。ルシフェラーゼは高温処理によって不可逆的に変性沈殿する。しかしHSP90存在下にルシフェラーゼを熱処理し、その後、reticulocyte lysateを加えてインキュベートするとルシフェラーゼ活性の回復がみられた。この結果は、高温処理によって構造変化し基質結合能を持ったHSP90が、変性途中、逆に考えればフォールディング中間体のルシフェラーゼと結合し、ルシフェラーゼが変性沈殿してしまうのを防いだことを示唆する。すなわち、ルシフェラーゼを基質とした場合もDHFRの場合と同様にフォールディング可能な状態でHSP90と結合すること、そしてその結果不可逆的に変成することを免れ、reticulocyte lysate中のTRiCのような別のシャペロンによって活性を回復することができたと推定される。また実際に細胞を加熱したときも細胞内のHSP90がオリゴマー化すると思われる実験結果も得た。これらの結果を総合すると、HSP90の機能は単にストレスによって合成が誘導され、量的に増加することで細胞をストレスから防御する以外にも、ストレスによってHSP90自体が構造変化し強力なシャペロン機能を獲得することにより細胞防衛機構で働く可能性が示唆された。
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