1994 Fiscal Year Annual Research Report
免疫系因子のモチーフを持ち神経細胞の特異性に関与するhigタンパク質の機能解析
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06680780
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
浜 千尋 国立精神・神経センター, 神経研究所・遺伝子工学研究部, 室長 (50238052)
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Keywords | シナプス / シナプス間隙 / ショウジョウバエ / 神経 / 免疫グロブリンドメイン / 分子生物学 / 遺伝子 / 行動異常 |
Research Abstract |
hig変異株はエンハンサートラップ法により作製した1100系統の中から成虫の動きが著しく低下するという表現型を指標にして分離された。hig遺伝子は中枢神経系で特異的に発現しており神経発生の後期および成虫時の脳と腹部神経節で強い発現を示す。塩基配列から予想されるhigタンパク質はシグナル配列、RGDS配列、1個の免疫グロブリンドメイン、そして3ないし4個連続して存在する補体結合タンパク質ドメインを持っており、これらの構造から細胞外に存在し他の分子と相互作用して機能することが示唆される。このhigタンパク質の細胞レベルでの機能を明かにするため抗体を作製して局在を電子顕微鏡で調べてみると、成虫脳の細胞体では核膜、小胞体/ゴルジ体等の分泌装置が染色され、さらに神経叢の領域ではシナプス間隙に顕著な局在が認められた。他の観察事実とも合わせるとhigタンパク質は前シナプスニューロンで産生され小胞にはいって軸索輸送を受けた後、シナプスで放出され間隙に蓄積すると考えられる。そしてその欠損の結果、神経回路に異常が生じ行動異常が認められるようになる。さらにheat shockプロモーターの調節下でhig cDNAを条件的に発現させて成虫の運動能の回復を調べる実験により、higはシナプス形成時に必要であることがわかった。また、higタンパク質は一部のシナプス間隙にのみ存在することから、シナプスの標的選択の特異性あるいはシナプスの機能的な特殊化に関与していることが示唆される。タンパク質の構造からみても、higはシグナル分子としてシナプス形成に機能していると考えられた。
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