1995 Fiscal Year Annual Research Report
骨盤神経節の自律神経遠心路喪失後の機能回復機構の解明
Project/Area Number |
06680815
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Research Institution | AKITA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
川谷 正仁 秋田大学, 医学部, 教授 (00177700)
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Keywords | 骨盤神経節 / 自発放電 / アセチルコリン / 膀胱 / 自律神経 / ラット |
Research Abstract |
本年度はラット骨盤神経節のその興奮入力を司る神経の骨盤神経を切断し、神経節の興奮性の変化について検討した。特に神経節全体で少ない興奮性入力に対応して神経節全体が興奮する機構が存在する可能性について電圧感受性色素を用いて神経節全体の対象として検討した。ラットの骨盤神経節を一側だけ切断し2-4週間後にネンブタールによる深麻酔を行い切断側骨盤神経節を摘出した。タイロード液中で周囲結合組織の除去を行い、電圧感受性色素と約30分間浸潤させた後蛍光顕微鏡を用いて観察ならびに実験を行った。電圧感受性色素の明るさの変化は富士フィルム社のデルタロン1700にて測定及び解析を行った。0.6msを1つのフレームとした連続512フレームの測定を繰り返した。明るさの変化については0.01%以下の変化は緑色のままとし、0.05%の変化は黄色0.1%以上の変化で赤となる様に全体を256階調で表示した。 正常の骨盤神経節を経時的に測定しても色素の明るさに変化は認められず、全フレームに渡り緑色を示した。1.5×10^<-3>M KCl投与すると一過性に神経節が赤色に変化し0.9秒後にこの興奮は消失した。KClの濃度を増加させると濃度依存的に赤色化する部分の面積が増大したが消退時間に相違はなかった。同様に3.3×10^<-6>M以上の濃度のアセチルコリンでも画面が赤色に変化した。KClの変化は神経節遮断薬のヘキサメソニウムで影響を受けなかったが、アセチルコリンの効果は完全に遮断された。 骨盤神経切断後の神経節では自発的な興奮の発生と伝播が約0.3〜0.5秒間隔で周期的に認められた。この発火は神経節内で1ヶ所〜数ヶ所発生していることが認められた。そして、この興奮の変化は6.0×10^<-7>Mのテトロドトキシンで完全に消失した。KClの効果は正常神経節と同じ濃度で同じ様な経過を示したが、アセチルコリンの効果は正常神経節の約1/5〜1/10の濃度閾値で同様の変化をおこすことが認められた。 したがって、骨盤神経切断後のラット骨盤神経節には自発発火する神経細胞群とそれに引き続き興奮を伝播する神経ネットワークが形成され、より少しの興奮性入力に応じて多くの神経節細胞が興奮し標的臓器の収縮を引き出せる可能性を作っていることが明らかとなった。
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