1995 Fiscal Year Annual Research Report
環境および社会的ストレスがオスニホンザルの生殖機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
06680830
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
清水 慶子 京都大学, 霊長類研究所, 教務職員 (90135616)
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Keywords | ニホンザル / オス / ストレス / コルチゾール / テストステロン / 精巣機能 |
Research Abstract |
本研究所にて群れ飼育中の成熟オスニホンザルを他の個体から完全に隔離された屋内個別飼育ケージに隔離し、隔離ストレスを負荷し、隔離前から隔離終了まで経時的に採血を行い、血中ストレス関連ホルモンのうちコルチゾール値、生殖関連ホルモンのうち黄体形成ホルモン(LH)値、テストステロン値、プロラクチン値を測定して隔離ストレスに伴う精巣機能の内分泌学変化を検討した。さらに、2週間の隔離の後、元のグループケージに戻すことにより、ストレスからの回復の経過を調べた。その結果、屋内個別ケージへの隔離により、直ちにテストステロン値が有意に上昇し、コルチゾール値は、これと逆相関し、有意に減少した。また、これらのサルを元のグループケージに戻すと上記ホルモン値はただちに元の値に戻ることが分かった。これらは実験開始時に予想した結果と全く逆の結果であった。これらの原因として考えられることは、まず実験に使用したサルが過去において屋内個別飼育ケージ飼育の経験があるかどうかという点と、屋外ケージと屋内ケージでは本実験期間である冬期には室温がかなり異なる点である。これらを調べるために過去に個別飼育の経験がないサルを用い、屋外に設置され、視覚、聴覚さらに嗅覚情報としては仲間から隔離されていない個別ケージに移動して再度実験を行なった。その結果、血中内分泌動態は上記実験と異なり、個別ケージへの移動および復帰直後にコルチゾールおよびテストステロンの一過性の上昇が見られた。生理、行動面では、隔離ストレスを負荷されたオスザルは、時間と共に沈鬱になり、元気消失、体重減少が見られた。血液生化学的には白血球百分比に若干の変化が認められた。これらのことから、最初の実験時に見られた内分泌動態の変化はおそらく温度によるものであることが示唆された。また、群飼育のこれらの結果は、視覚、聴覚さらに嗅覚情報としては仲間から隔離されていない個別ケージに隔離をおこなっても移動直後の内分泌動態にストレスと思われる若干の変化はあるものの直ちに元に戻る事が分かった。これらの結果は、サルにおけるストレス負荷による副腎皮質の関与と生殖機能抑制の点で、また、季節繁殖動物であるオスニホンザルの生殖機能発現のメカニズムを知る上でも興味深い。
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