1994 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌剤含有創傷被覆材ならびに複合培養皮膚の開発:基礎および臨床評価
Project/Area Number |
06680860
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
黒柳 能光 北里大学, 医学部, 講師 (80170140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩谷 信幸 北里大学, 医学部, 教授 (80050376)
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Keywords | 人工皮膚 / 培養皮膚 / コラーゲン / 線維芽細胞 / 角質化細胞 / 抗菌剤 / 創傷被覆材 |
Research Abstract |
患者自身の皮膚細片から細胞を採取し増殖して皮膚の構造の一部を再構築して同一患者の皮膚欠損創に移植する自家培養皮膚は自家分層植皮の代替法となる。一方、他人の皮膚由来の細胞を使用して作製した同種培養皮膚は、そこに組み込まれた細胞から産生され放出される種々の生理活性物質により難治性皮膚潰瘍や褥瘡などの治癒を促進することが可能となる。我々は、新医療技術の確立を目指して自家培養皮膚ならびに同種培養皮膚の臨床応用を展開している。本研究では、コラーゲンマトリックスに線維芽細胞を組み込んだ同種培養真皮シートを作製し、動物実験により創傷治癒促進効果を確認した。Wisterラットの背部に直径35mmの全層皮膚欠損創を作成し、その中央部に直径10mmの皮膚を島状に温存した。この創面に、SDラットの皮膚由来の線維芽細胞から作製した培養真皮シートあるいは角質化細胞から作製した培養表皮シートをグラフトして、島状皮膚周辺からの表皮化の速度を肉眼的および組織学的に観察した。動物実験においては、皮膚欠損創の周辺からの表皮化は、創の著しい収縮により定量的に測定できないが、本実験系の創傷モデルは、創収縮の影響を受けることなく定量的に表皮化の程度が観察できた。線維芽細胞も角質化細胞も種々の生理活性物質を産生することが報告されているが、何方の細胞がより優れた表皮化促進効果を発現するのかを創面で比較検討した研究報告はない。本研究における動物実験の結果、角質化細胞の方が線維芽細胞より優れた表皮化促進効果を示した。しかし、角質化細胞の培養は特殊な培養系が要求され、そのような条件下でも増殖と同時に分化が進行するため、3〜5回の継代培養しかできない。これに対し、線維芽細胞は、通常の培養系で20〜30回の継代培養が可能である。このような観点から、臨床応用を展開する際には、線維芽細胞を組み込んだ同種培養真皮シートが有望と判断できる。そこで、現在同種培養真皮シートを作製して難治性皮膚潰瘍や褥瘡などの治療を行っている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 中村元信: "スルファジン銀含有創傷被覆材の深達性熱傷への適用:臨床評価" 日本熱傷学会 会誌. 20. 53-63 (1994)
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[Publications] 白崎祥晃: "培養皮膚モデルを用いた細胞毒性試験" 生体材料. 12. 217-224 (1994)
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[Publications] 白崎祥晃: "培養皮膚に適した移植床の形成:動物実験評価" 生体材料. 12. 265-273 (1994)
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[Publications] 山下理絵: "同種複合培養真皮と抗菌剤含有創傷被覆材による創傷治癒効果:基礎的実験評価" 日本形成外科学会 会誌. 14. 543-553 (1994)
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[Publications] 山下理絵: "同種複合培養真皮と抗菌剤含有創傷被覆材による創傷治癒効果:臨床評価" 日本形成外科学会 会誌. 14. 554-564 (1994)
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[Publications] 黒柳能光: "Development of a new wound dressing with antimicrobial delivery capability" Wound Repair Regeneration. 2. 122-129 (1994)
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[Publications] 黒柳能光(分担): "最新の熱傷臨床:その理論と実際" 編集 平山峻,島崎修次 克誠堂出版, 489 (1994)
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[Publications] 黒柳能光(分担): "ドレッシング:新しい創傷管理" 監修 穴澤貞夫 へるす出版, 235 (1995)