Research Abstract |
平成6,7年度に,生体軟組織の横波弾性波,弾性表面波の発生・伝播を,通知解析により予測した。本年度は,その実験による確認を目指した。実験は,ゼラチンゲルを測定対象とした。バイモルフ振動子をゼラチンゲルの自由表面に斜めに突き刺し,測定物の表面を励振して、その際発生する表面波の伝播速度と減衰定数をレーザードップラー振動計で測定した。100〔Hz〕から1〔k-Hz〕程度の周波数範囲で,速度は,1〜3〔m/s],減衰定数は,0.1〔mm^<-1>〕程度の範囲であった。この測定は,他の研究者も同時期に行っており,大差はなかった。また,観測波形には,速度分散性,非線形性が見られた。数値解析で利用の可能性を予測した数10[kHz]付近では,信号が微弱で本実験系で正確に観測はできなかった。実験した100〔Hz〕から数〔kHz〕の範囲では,縦波と同様の減衰であり,利用可能と考える。今後,生体軟組織に対する横波や表面波の有効利用を考えたい。 利用した数値解析法は,蛙飛び差分法である。この手法は,陽的な定式化が可能,式がシンプル,境界条件の設定が簡単などの特徴を有し,時間領域の解析に向いている。そこで,生体組織だけでなく,超音波診断装置のシミュレーションを試みた。ここまで,圧電体で作られた探触子とそのバッキング材,整合層の応答を解析するプログラムを完成させた。それによる,超音波の射出については,現在プログラム中である。 また,同じ手法で,超音波顕微鏡のシミュレーションを行うプログラムの作成も行った。超音波顕微鏡は,測定スポットが小さいので,不均質な生体組織の特性測定に有利である。しかし,生体からの応答については,良く知られていない。本研究では,集束超音波が固体試料から反射する様子を時間軸上で解析するプログラムを作成した。現在,固体を生体組織に置き換えて,詳しい解析を行っている。
|