1994 Fiscal Year Annual Research Report
産業化民主主義国の税制の比較政治研究:付加価値税をめぐる政治経済状況
Project/Area Number |
06720043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 淳子 東京大学, 教養学部, 助教授 (00251314)
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Keywords | 政治(学) / 政策決定 / 公共政策 / 税制 / 付加価値税 |
Research Abstract |
本研究は、比較政治経済学の分野で、従来、余り研究の対象とされていなかった、産業化の進んだ民主主義国における歳出構造を、分析することを目的として、行われた。特に、一九七〇年代以降の赤字財政の下で、導入された付加価値税に代表される、広い課税基盤を持つ消費課税が、それらの国々における支出構造や、課税負担者や受益者間の関係に、どのような影響力を持つかが、分析の対象となった。支出圧力、特に、社会保障制度の拡充による福祉支出の増大が、各国政府の付加価値税導入の決定とどのような関係にあるのか、またそれが、政党政府の党派性とどのような関係にあるのか、といったことが、主要な疑問点であった。今回行なった分析によれば、付加価値税歳入の増大、左派政権、福祉支出の増大の関係が、確かめられたが、一方で、これらの間に直接的な因果関係があるのか、或いは、他の要因が介在するのかについては、確定できなかった。それゆえ、本研究を発展させる、今後の研究計画としては、対象諸国の導入に至る国内政治事情のより一層之解明がもとめられる。一方、付加価値税からの税収のみで、こうした政府の歳入増大の「意図」を探るには不十分であることがわかった。すなわち、付加価値税導入後の免税特別措置などで、税収が目減りしたり、多税率導入等で、税の負担が、広く薄く全ての消費者に課されていると仮定するのは、難しいからである。また、福祉支出が相対的に多いといえないまま、付加価値税を導入した、日本のような事例をよりよく分析するには、過去の福祉支出より、将来にわたっての支出の増大の可能性と付加価値税導入の関係を探る必要性が大きいことがわかったのも、本研究の成果であった。研究の成果は、本年七月に開かれる、日本とオーストラリアの政治学会による合同の学会の後、英文の研究書の一部として発表される予定である。
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