1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06740142
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
服部 哲弥 宇都宮大学, 工学部, 助教授 (10180902)
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Keywords | セルフアヴォイディングウォーク / 自己回避確率過程 / フラクタル / くりこみ群 / 臨界現象 / リヤプノフ関数 / 漸近評価 / 熱力学的極限 |
Research Abstract |
本研究の目的は,d-次元pre-sierpinski gasket上のself-avoiding walk(自己回避確率過程)の諸性質を調べることであった。本研究によってd-次元pre-Sierpinski gasket上のself-avoiding walkに対応するくりこみ群の,斥力potentialに対応する不変部分空間の決定と、自明でない固定点の存在が証明された。また,くりこみ群に対するこの部分空間内での自然なLyapnov関数の決定について予備的な考察を得た。 Self-avoiding walkの漸近的評価の精密な決定はくりこみ群力学系の大局的なtrajectoryの不動点への収束と,不動点付近での力学系の定量的評価が必要である。後者は力学系の不動点近傍の比較的一般的な問題だが,前者は個別の問題毎に調べる必要があり,self-avoiding walkに対応するくりこみ群に対しては未解決である。これに関して,本質的な鍵となるLyapnov関数を構成できる可能性を得た。Potentialの斥力性を表すparameter空間上のある関数がLyapnov関数になることが予想される。これは今後の課題である。不動点への収束やLyapnov関数の存在がある弱い条件の下で広い範囲の力学系に対して成立する可能性を,備品として備えた電子計算機によって検討することができた。これが以上の考察を行う上で重要な役割を果たした。 self-avoiding walkはマルコフ性を持たない確率過程の典型的な例として特徴的かつ極めて重要な数学的対象であり,また物理や化学をはじめとする諸科学への応用範囲も広い。マルコフ性に依存しない確率過程の解析方法の開発は21世紀の確率過程論の大目標であるが,これまでの進歩は極めてわずかであった。マルコフ性に依存しない解析方法としてのくりこみ群力学系による解析を進展させ,一層の発展の可能性を示した点で成果があった。
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