1994 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーションが内在する磁性体における磁化過程の磁場掃引速度依存性
Project/Area Number |
06740277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
香取 浩子 東京大学, 物性研究所, 助手 (10211707)
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Keywords | スピングラス / 磁化過程 / フラストレーション |
Research Abstract |
交感相互作用競合系である混晶Fe_xMn_<1-x>TiO_3は典型的なスピングラスの振舞いを示す。リエントラントスピングラスの振舞いを示すx=0.65の試料の磁化過程に現れるメタ磁性転移が、4.2Kにおいて、定常磁場を用いて1.7x10^<-3>T/秒でゆっくりと磁場を掃引した場合は非常に鈍って観測され、一方、パルス磁場を用いて揮〜2x10^3T/秒で速く掃引した場合には比較的シャープに観測された。通常の系では、磁場掃引速度が速いほど系の磁場に対する応答が遅れるために転移が鈍る。従って、x=0.65の試料で観測された振舞いは、通常の系の振舞いとは逆のものである。ただし、〜10^3T/秒の磁場掃引速度領域では、通常の系と同じように、磁場掃引速度が速いほど転移が鈍る様子が観測された。この原因についてはまだ明かとなっていないので、今後、さらに研究を進める予定である。 さらに、定常磁場においてx=0.65の試料の7Tまでの磁化過程の温度依存性を測定したところ、温度の低下と共に、メタ磁性転移の際に生じるヒステリシスが大きくなる現象が観測された。しかし、1.5Kまで温度を下げると、ブロードなメタ磁性転移が一次転移的なメタ磁性転移へと変化した。磁場掃引速度や測定温度を同一にした場合でも、この一次転移的なメタ磁性転移は2.5T以上6.5T以下の様々な磁場で観測された。この原因は、スピングラスの特徴である系の自由エネルギーの多谷構造を反映した現象であると思われる。現在、その詳細について研究を続けている。
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[Publications] A.Ito: "Metamagnetic transition of the reentrant spin-glass Fe_<0.65>Mn_<0.35>TiO_3:Anomalous dependence on sweep-rate of magnetic field" Physica B. 201. 84-87 (1994)
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[Publications] H.Aruga Katori: "Experimental study of the de Almeida-Thouless line by using typical Ising spin-glass Fe_xMn_<1-x>TiO_3 with x=0.41,0.50,0.55 and 0.57" Journal of the Physical Society of Japan. 63. 3122-3128 (1994)