1994 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック系の量子干渉効果の乱雑行列を用いた研究
Project/Area Number |
06740327
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
飯田 晋司 愛媛大学, 理学部, 助教授 (60183737)
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Keywords | メゾスコピック系 / 量子ドット系 / 乱雑行列模型 / 非線形シグマ模型 / 量子カオス散乱 |
Research Abstract |
本研究では,外界と弱く局所的に結合するメゾスコピック系に対して,コンダクタンスの確率分布関数をGOE-GUE間の遷移を表すランダムハミルトニアン(乱雑行列)について求めることを目的とした。 本年度に以下の研究成果を得た: 1.原子核反応に用いられる散乱行列の表式がメゾスコピック系の電子散乱にも使えることを確認した。 極低温下のメゾスコピック系の電気伝導は電子の不規則ポテンシャルによる量子力学的散乱過程と見なされる。従って乱雑行列を不規則ポテンシャルのモデルとしてコンダクタンスの統計平均を計算する場合,まず散乱行列がこの乱雑行列でどの様に表されるかを知る必要がある。ランダムハミルトニアンを用いた散乱行列の表式は原子核の共鳴反応(複合核反応)の場合に以前から知られている。この場合,乱雑行列は核子の配列空間におけるハミルトニアンの一部と考えられる。電子のポテンシャル散乱では乱雑行列は導体中で不規則な散乱が起こる特定の領域内のハミルトニアンのモデルと考えられ,上述の結果がそのまま使えるかは自明でない。そこで,ポテンシャル散乱について散乱行列の形式的表式を変形し複合核反応の場合と同等の散乱行列の形が得られることを確認した。以上の内容については論文にまとめ投稿中である。 2.コンダクタンスの任意のモーメントを生成する母関数の表式をsupermatrix上の積分という形で得た。 コンダクタンスの確率分布関数は最も簡単な乱雑行列の統計集団,GUE,については既に求められている。GOE-GUE間の遷移を考える為にはより多くの補助変数を導入せねばならずGUEの場合と全く同じ方法は使えなかったが,コンダクタンスのモーメントの母関数を可換数(通常の実数のこと)と反可換数の積分の形にまで導くことができた。今後は,この積分を反可換数の部分については解析的に,可換数の部分については一部数値的に計算する必要がある。
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