1994 Fiscal Year Annual Research Report
同位体組成および微量元素存在度に基づくコンドリュール前駆物質の起源に関する研究
Project/Area Number |
06740426
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三澤 啓司 神戸大学, 理学部, 助教授 (70212230)
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Keywords | 隕石 / 同位体 |
Research Abstract |
本研究では、コンドリュール前駆物質のひとつである溶け残りスピネルのMg同位体測定をおこなうために、分析方法の確立に重点を置いた。標準試料として、隕石中に存在するスピネルと化学組成がほぼ等しいロシア産のMg,Alスピネルをもちいた。Mgを化学分離せず、10マイクログラム程度のスピネルの破片を直接ボ-ト型レニウムフィラメントにのせ、シルカゲルとリン酸でセメントして質量分析をおこなうという方法(ダイレクトローディング質量分析法)を採用した。この方法では試料Mg標準試料と比較してイオン電流が増大する温度が異なるうえに、AlイオンビームがMgのイオン化を阻害した。注意深い試料ロ-ディングとフィラメント温度コントロールにより、Mg同位体測定に充分なイオン電流が得られた。測定データは、しかしながら試薬Mg標準試料と比較して系統的にシフトしていた。この原因としては、強いAlのイオンビームが分析管のなかで反射してMg質量領域に影響をおよぼしたためと推測された。 アエンデ棒状カンラン石コンドリュールより分離した溶け残りスピネルについて、上記の方法によりMg同位体分析をおこなった。この試料では、標準試料と比較して重い同位体に富む有為な質量分別効果が認められた。測定中の質量分別効果を補正したあとの^<26>Mg/^<24>Mg比は、標準試料と誤差の範囲内で一致した。今回測定したスピネルのMg質量分別効果(〜+3%/a.m.u.)は、昨年筑波大学の二次イオン質量分析計を用いて得られたデータ(〜+7%/a.m.u.)の2分の1であった。このことから、質量分別効果の小さい試料では二次イオン質量分析計の測定精度は充分でないことが明らかになった。今回得られた結果とスピネルの岩石鉱物学的な特徴およびホストコンドリュールの微量元素存在度から、炭素質隕石コンドリュール前駆物質のひとつは、主要元素であるMgにおいて質量分別を起こすような原始太陽系星雲の環境で凝縮したと結論された。 なお本研究の成果は、国立極地研究所で開催された第19回南極隕石シンポジウムおよびニューメキシコ大学で開催された「コンドリュールと原始惑星円盤に関する国際会議」において発表された。
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