1994 Fiscal Year Annual Research Report
酸素原子のスピン軌道状態の緩和と反応選択性に関する研究
Project/Area Number |
06740436
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三好 明 東京大学, 工学部, 助手 (60229903)
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Keywords | 酸素原子 / スピン軌道状態・緩和 / スピン軌道状態反応選択性 / スピン軌道状態分布 / 真空紫外レーザ誘起蛍光法 |
Research Abstract |
本研究では、スピン軌道状態を区別した酸素原子の高感度検出手法を確立し、スピン軌道状態間の緩和速度の測定、反応選択性の検討を行った。 1.酸素原子の検出手法の確立:本研究ではスピン軌道状態を区別した酸素原子(^3P_J)の高感度検出手法として真空紫外レーザ誘起蛍光法を用いた。真空紫外光源はKr中での共鳴四波混合法を用いて発生した。発生した真空紫外光の線幅は〜1cm^<-1>と、スピン軌道状態(エネルギー差:158cm^<-1>[^3P_2-^3P_1],68cm^<-1>[^3P_1-^3P_0]を区別して検出するために十分であった。また検出限界として〜1×10^9atoms cm^<-3>と十分な検出感度が得られた。 2.スピン軌道状態間緩和速度の測定:SO_2の193nmレーザ光分解によって酸素原子を生成し、Heによる状態間緩和速度の測定を行った。^3P_0→^3P_2,^3P_1→^3P_2緩和速度として(4.4±1.0)×10^<-11>,(2.3±0.5)×10^<-11>cm^3molecule^<-1>s^<-1>が得られた。またSO_2の193nm光分解で生成する酸素原子のスピン軌道状態初期分布は非統計的・非ボルツマン分布であった。[F(^3P_0)=0.09±0.02,F(^3P_1)=0.25±0.04,F(^3P_2)=0.66±0.04] スピン軌道状態間の反応選択性の検討:酸素原子による水素原子引抜反応において3原子近似の断熱ポテンシャル上ではスピン軌道状態間の反応性に違いがあることが予想される。本研究では酸素原子とシクロヘキサンの反応で、297K,344Kにおいて反応選択性の検討を試みが、反応速度に明確な違いを確認することはできなかった。しかしながら、2.で測定したようにスピン軌道状態間の緩和が速いためこの結果から反応選択性を否定することはできない。この問題に関しては将来、分子線のような希釈気体との衝突が無視できるような実験によって解明されるべきであろう。
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