1994 Fiscal Year Annual Research Report
II-VI族半導体量子井戸構造における光学利得の生成機構の解明
Project/Area Number |
06750003
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 陽一 筑波大学, 物理学系, 助手 (00251033)
|
Keywords | ワイドギャップII-VI族化合物半導体 / 量子井戸 / 光学利得 / 短波長半導体レーザ / 局在励起子 / 励起子分子 |
Research Abstract |
ワイドギャップII-VI族化合物半導体では、III-V族化合物半導体の場合と異なり、レーザ発振機構、即ち、光学利得の生成機構への励起子の寄与が指摘されている。このことは、II-VI族半導体の場合、III-V族半導体の場合と比較して、励起子のボ-ア半径が比較的小さく、かつ、その束縛エネルギーが大きいために、高密度励起による励起子のスクリーニングが生じにくく、励起子がより高密度の状態まで安定に存在することに起因している。そこで本研究では、II-VI族半導体量子井戸内に形成される高密度励起子系が示す基礎物性に着目し、高密度励起下で観測される励起子系発光スペクトルの時間分解分光を行った。その結果、II-VI族半導体量子井戸内に形成される励起子分子の存在を明らかにし、その励起子分子発光の時間減衰特性や、励起子分子-励起子間の循環プロセス等を初めて評価した。まず、MOMBE法により作製されたZnCdSe-ZnSSe多重量子井戸構造について、その量子井戸層幅(L_W=8nm)が励起子のボ-ア直径と同程度である試料に対して、励起子分子の束縛エネルギーが約15meVに増大することを明らかにした。この値は、バルクZnSeにおける励起子分子の束縛エネルギー(3.5meV)の約4.3倍である。さらに、この励起子分子の発光寿命は、6psであり、バルクZnSeの場合の40psと比較して非常に短い値を示すことが明らかにされた。この実験結果は、励起子分子-励起子間の光学遷移に対する振動子強度が、量子井戸の場合、バルクと比較して約7倍増大していることを示している。また、CuCl等では、励起子分子の輻射再結合過程が光学利得の生成機構に関与するという報告があるが、II-VI族半導体量子井戸構造の場合、励起子分子は光学利得の生成機構に寄与せず、その光学利得の生成機構は、励起子の局在化と局在励起子状態の部分的な位相空間占有効果によって説明された。
|
-
[Publications] 山田陽一: "Ultraviolet lasing and excitonic gain in Cd_xZn_<1-x>S-ZnS strained-layer multiple quantum wells" Journal of Crystal Growth. 138. 570-574 (1994)
-
[Publications] 田口常正: "CdZnS歪超格子紫外線レーザーと発振機構" 固体物理. 29. 875-881 (1994)
-
[Publications] 山田陽一: "Time-resolved spectroscopy of biexction luminescence in wide-bandgap II-VI quantum wells" Superlattices and Microstructures. 15. 33-36 (1994)
-
[Publications] 川上養一: "Localized excitons in cubic Zn_<1-x>Cd_xS lattice matched to GaAs" Physical Review B. 50. 14655-14658 (1994)
-
[Publications] 山田陽一: "Time-resolved spectroscopy of biexction luminescence in Zn_xCd_<1-x>Se-ZnS_ySe_<1-y> multiple quantum wells" Physical Review B. 51. 2596-2599 (1995)