1994 Fiscal Year Annual Research Report
分子線エピタキシ-法における(311)面上の拡散過程と量子構造の形成に関する研究
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06750008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 武司 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (90251462)
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Keywords | (311)A基板 / 分子線エピキタシ- / 電気伝導特性 / 異方性 / 量子井戸 / 長周期構造 / 拡散 / 吸着原子 |
Research Abstract |
(311)AGaAs基板上のGaAsやAlAsのMBE成長実験により成長条件(本研究では主に基板温度)によって吸着原子の拡散を制御でき、その微細構造がRHEED(高エネルギー反射電子線回折)の回折パターンの観察および量子構造の電気伝導性の解析より明らかになった。その結果、表面モフォロジーは高温、低ひ素圧下の成長条件では(011)方向に30Aオーダーの長周期構造が形成されるのに対し、低温、高ひ素圧下ではほぼ平坦な界面が形成される。さらに、量子井戸構造における極低温の電気伝導特性の詳細な解析より以下の知見を得た。 1.移動度が界面構造に支配される極低温領域(T=4.2K)では移動度比(R=μ(233)/μ(011))は膜厚が薄くなるにしたがい増大し、井戸幅が14〜17ML(原子層)の量子井戸においてR=7〜8に達する異方性が測定された。この原因は主に(311)面上に形成される長周期構造(波状構造)に起因し、価電子帯のバンド構造に起因する有効質量の異方性は1.5〜2程度の寄与であることを明らかにした。 2.さらに、光学フォノンが移動度を支配する中温度領域(T=77K)では井戸幅が薄くなるにしたがい、(233)方向の移動度が5000cm2/Vsから8000cm2/Vs以上に増大る。この原因については量子閉じ込め効果によるホールバンドの非放物線性の抑圧によるものと考えられる。 この結果、高温、低ひ素圧下では吸着原子の拡散が促進され、表面エネルギーの低い安定な30Aオーダの超周期構造が(011)方向に形成されることを明らかにした。
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