1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06750195
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 茂夫 東京大学, 工学部, 助教授 (90209700)
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Keywords | フラーレン / アーク放電 / 生成機構 / 対流 / HPLC / 温度計測 / 炭素 / 生成 |
Research Abstract |
アーク放電法やレーザー蒸発法によってフラーレン(C_<60>やC_<70>のように炭素原紙が5員環と6員環とで閉じた中空殻状の分子)の量的な生成が可能となってきているが、その手法はいわば偶然に発見されたものであり、その生成機構には依然として未知の部分が多い.そこで,アーク放電法による生成実験装置を用いて,フラーレンの生成条件を検討した.具体的には,一定雰囲気ガス中で炭素棒間でアーク放電加熱をすることによってフラーレンを生成する.実験装置で回収したフラーレンをトルエンを用いたソックスレ-抽出によりススと分離し,その質量から生成率を求めた.さらに,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって,C_<60>,C_<70>,C_<76>等の分離を行い,それぞれの成分比を求めた.一連の実験の結果,生成容器内のススの回収場所によって生成率が異なり,容器の上方で生成率が高くなる場合が多いことが分かった.この結果より,生成容器内でのアーク放電加熱による自然対流によってフラーレンの生成率が強く影響されると示唆される.さらに,自然対流に加えて一定流量の不活性ガス流を与えることによってフラーレン生成率が容器内でどのように変化するかを測定した.その結果,生成率の容器内分布は一様化される傾向があり,極端に全体の生成率を向上させることはできなかった.また,加えたガス流によって生成率の圧力依存性がかなり異なることが明らかとなり,フラーレン生成がアーク近傍の局所的な条件のみならずマクロな対流伝熱によって強く影響を受けることが明らかとなった.容器内の温度測定の結果によれば,アーク中心から4〜5cm程度離れた部分での温度とフラーレン生成率とが強い相関を示しており,炭素クラスターが600〜700℃程度まで冷却されたところでの雰囲気状態がフラーレンの生成と深く関わっていることが示唆された.
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