1994 Fiscal Year Annual Research Report
半導体超薄膜ヘテロ構造共鳴トンネル過程における界面凹凸散乱の研究
Project/Area Number |
06750302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 昌弘 東京大学, 工学部, 助教授 (50183869)
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Keywords | 半導体超薄膜構造 / 共鳴トンネル現象 / ヘテロ界面凹凸 / 凝束縛系における散乱 |
Research Abstract |
半導体超薄膜構造内で最も基本的・本質的な量子効果である共鳴トンネル現象について、「原子層単位の界面凹凸がトンネル透過エネルギースペクトルに与える影響」を解明するために、実験的・理論的研究を行った。それらの概要と得られた結果を列挙すると、(1)面内膜厚分布を有するエピウエファを活用して、量子井戸層および量子障壁層の厚さが系統的に異なる二重障壁共鳴トンネルダイオードを多数作製し、トンネルスペクトロスコピー法によってトンネル透過エネルギースペクトルを測定した。その結果、共鳴的な要素(ピーク形状)が界面凹凸の変化に対応して十meVの大きさで変動していることが観察された。(2)散乱現象の理論的考察の結果、波数ベクトルの方向変化を伴う弾性散乱では、界面に平行な方向の散乱ベクトルであっても界面に垂直な方向の波数変化が生じ、共鳴トンネル現象の垂直方向波数ベクトルの大きさで決まる共鳴エネルギー条件を変化させ得ることを発見した。(3)界面凹凸による散乱現象を定量的に取り扱うために、結晶成長のモンテカルロシミュレーションを行い、その結果の考察から結晶成長モードと界面凹凸の2次元フーリエスペクトル成分との関係を記述できる近似式を導出した。(4)上記の(2)および(3)のモデルに基づいて、凝束縛系量子井戸(=二重障壁構造)における量子準位の界面凹凸散乱による広がりを求めた結果、条件によっては数十meVのオーダでエネルギー広がりが生ずること、そして従来は界面の平坦性を向上させると信じられていた結晶成長モードでそれが生ずること、等が判明した。特に協調したいのは、最後の(4)が従来の常識では考えられなかった結論であり、本研究結果の独創性を象徴している点である。
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[Publications] 星田剛司,土屋昌弘,中村有水,神谷武志: "Studies on Interface Roughness Scattering Effects in MBE Grown Resonant Tunneling Structures" Workbook of Eighth International Conference on Molecular Beam Epitaxy. 426-427 (1944)
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[Publications] 土屋昌弘,星田剛司: "量子構造中のトンネル過程における散乱現象" 東京大学工学部紀要. A-32. 38-39 (1994)
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[Publications] 星田剛司,田中俊毅,中村有水,土屋昌弘,神谷武志: "AlAs/GaAs二重障壁構造における共鳴トンネル現象のスペクトロスコピー(III)膜厚変化の影響" 第42回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集. (発表予定). (1995)