1994 Fiscal Year Annual Research Report
絶縁体中に形成された金属ナノメータ微結晶のデバイス応用に関する基礎研究
Project/Area Number |
06750309
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 正裕 東京工業大学, 工学部, 助手 (00251637)
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Keywords | 金属絶縁体ヘテロ構造 / 量子閉じこめ効果 / シリコンナノ微粒子 / フォトルミネッセンス / 可視発光 |
Research Abstract |
本研究は、金属(半導体)ナノ微結晶デバイスを実現するための基礎研究として、これまで報告者らにより開拓された金属/絶縁体ヘテロ薄膜形成技術をさらに発展させることにより、絶縁体結晶中への金属微結晶形成技術を確立し、さらに、得られた結晶の光学特性、電気特性を明らかにすることを目的とする。 この目的を達成するため、本年度は以下の成果を得た。 (1)金属/絶縁体ヘテロ構造形成に用いる材料としては、薄膜エピタキシャル成長の条件が既に明らかとなっているシリコン(Si)、絶縁体として弗化カルシウム(CaF_2)、さらに金属としてコバルトシリサイド(CoSi_2)を用いた。半導体及び金属の凝集しやすい性質を人工的に制御して金属(半導体)ナノ微結晶を形成し、その形状および密度を走査型電子顕微鏡を用いて観察することにより最適化した。特に本年度は、CaF_2/Si(111)上への半導体シリコンおよび金属コバルトシリサイド微結晶形成の基礎実験を、基板温度、成長速度の条件を変化させて行い、金属コバルトシリサイドおよび半導体シリコン微結晶のサイズおよび密度分布を制御する条件を明らかにした。その結果、同時蒸着法を導入すると、量子効果の発現が期待できるナノメートルサイズ(<10nm)のシリコンおよびコバルトシリサイド微粒子を絶縁体弗化カルシウム中に高密度に形成できることをはじめて明らかにした。 (2)同時蒸着法により得られたシリコンナノ微結晶のフォトルミネッセンス評価を行ったところ、測定温度20Kにおいて、ブルー・グリーン(波長500nm付近)の明瞭な可視発光をはじめて観測した。さらに、フォトルミネッセンススペクトルの成長基板温度依存性を調べたところ、成長温度が低いほど発光強度が低下し、発光スペクトルピークが短波側にシフトすることが確認された。これは成長温度の低温下によってシリコンナノ微粒子のサイズが小さくなり、量子閉じこめ効果によるエネルギー準位シフトが起きていることを示唆するものである。理論的に詳細な検討は今後の課題である。 本研究の成果は、金属(半導体)/絶縁体ヘテロ構造光デバイス実現の可能性を示唆するものであり、今後、基礎物性的な知見とともに、デバイス応用の観点からも広大な学問分野が開ける可能性を有する。
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[Publications] 渡辺正裕、岩井 浩、浅田雅洋: "絶縁体CaF_2上への金属Co微粒子の形成(30p-S-17)" 平成6年春季 第41回応用物理学会関連連合講演会. 3月30日. (1994)
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[Publications] 渡辺正裕、浅田雅洋: "CaF_2/Si(111)上への金属Co微粒子の形成(20p-MF-14)" 平成6年秋季 第55回応用物理学会学術講演会. 9月20日. (1994)
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[Publications] 渡辺正裕、飯塚文隆、浅田雅洋: "Si微粒子を分散したCaF_2/Si(111)薄膜のフォトルミネッセンス(29a-H-10)" 平成7年春季 第42回応用物理学会関連連合講演会. 3月29日. (1995)