1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06750401
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池原 雅章 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (00212796)
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Keywords | 全域通過回路 / 安定性 / 固有値 |
Research Abstract |
本研究では、安定性を考慮した全域通過回路の固有値設計法を示した。全域通過回路は、通信における伝送路の位相等化器や、システムの位相補正器として広く用いられている。従来所望位相特性と全域通過回路の複素誤差に着目し、Remezアルゴリズムを用いた最適な全域通過回路の設計法が示されているが、安定性の問題を考慮しておらず、しばしば不安定な解に収束したり、解が得られないと言う問題があった。一方FIR形伝達関数の近似においては、二乗ノルムを誤差評価関数とし、これを固有値問題に定式化してその最小固有値に対する固有ベクトルを解とする固有値フィルタと呼ばれる方法が提案されている。 本研究では、Remezアルゴリズムと固有値問題を組み合わせた全域通過回路の最適近似法を示した。周知のように固有値は、行列の次元数の値をとり、その最大固有値に対する固有ベクトルが最適な全域通過回路の係数を表わす。しかしこの解が安定性を満たすとは限らず、部分的な周波数帯域では不安定になる可能性がある。そこで、固有値を最小のものから順に並べ替え、安定判別を行ない、安定かつ最大の固有値に対する固有ベクトルを解とする。これで安定性は保証されるものの、チェビシェフの意味(等リプル)で最適であるとは限らない。そこで得られた解から、誤差の極大値を求め、これを新しい離散周波数ポイントとし、最適解が得られるまでこのRemezアルゴリズムを繰り返す。本手法により、安定かつ最適な全域通過回路が設計できた。特に所望特性が制限された帯域にある場合や、安定限界ぎりぎりの場合、本設計法は非常に有効である。
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Research Products
(1 results)